Music Mania

No Music No Life

パリ万博の思惑

2021年05月29日 | 日常
5月26日放送のNHK「歴史探偵」は1867年のパリ万博だった。
慶応3年、幕府の権威がダダ下がり真っ只中のなか、今一度徳川幕府こそが日本唯一の政権であることを世界に知らしめるため、そして日本は欧米列強に負けない文明、文化がある国であることをアピールするため、パリ万博へ出展することになったのだった。
結果として、欧米に負けない文明、文化のある国であるアピールは成功する。
実際、日本のパビリオンは大人気で、ジャポニスムブームの火付け役となる。
しかし徳川幕府ここにあり、というアピールは失敗に終わる。
なぜなら、薩摩藩が薩摩琉球国として、まるで一個の独立国家であるようなイメージを持たれてしまうのである。

このときの幕府側の関係者に渋沢栄一もいたらしい。
万博が終わってからもしばらくパリに滞在していた栄一たちだが、日本国内では大政奉還が行われるなど混乱が極まり、仕送りもなくなり資金が底をついたという。
そのため資金繰りに奔走し、すでにこのとき商才を発揮している。

結局、栄一たちが帰国したころにはすでに徳川幕府はなくなっており、最後の将軍である徳川慶喜は謹慎していた。
幕府の命運をかけた渡仏だったのに叶わなかったわけだが、そのかわりヨーロッパ文明を目の当たりにするというかけがえのない経験が、後に生かされることになったようだ。

戦いの音楽史

2021年05月29日 | 読書


お馴染み、みのミュージックのみの氏による初の著書である「戦いの音楽史」を読んだ。
今の若手でみの氏ほど音楽を聴き、音楽を分析し、音楽を語れる人間はいない。
そんな彼が全力を注いで書いた本、全音楽ファンは読むべきなのだ。

今回、極力自分の主観を排除し客観的な目で音楽史を書いたという。
その始まりはなんと黒人の奴隷制度からスタートする。
奴隷制度によりアメリカ大陸で働かされた黒人たちの音楽、ここにポピュラーミュージックの原点を置いている。
そこへヨーロッパからの移民によるフォークミュージックやカントリーミュージックがブレンドされていく。
その後、ブルースの誕生、ロックンロール、ビートルズと、お馴染みのポピュラーミュージック史に繋がっていくのだ。

この本での音楽史は、あくまでも大衆音楽の歴史であり、クラシック音楽についてはほとんど触れていない。
またジャズについても深掘りはされておらず、ロック、ポップス、R &Bが中心となる。
ただし、いくらみの氏といえど、本一冊で書ける分量は限られている。
さらに細かい分析はYouTubeを見ていただくとして、歴史の全体像を見るにはとてもいい内容だ。

僕はこれを読んで、いかに木を見て森を見ていなかったかを思い知った。
部分的には、もしかすると僕の方が詳しいところもあるかもしれない。
しかし、大衆音楽には時期というものが重要で、そういう全体像が見えていないと、なぜそのアルバムは名盤とされるのか、なぜこのタイミングでこれが発表されたのかがわからなくなるのだ。
そういうことを含め、ポピュラー音楽の全体像が少しとはいえわかるようになったのはよかった。