今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

「天気の子」に感謝(ネタバレあり)

2019年08月23日 | 作品・作家評

私が映画館で映画を観るのは年に一度くらいになってしまった(もっぱらレンタルビデオで鑑賞)。
今年は、平日の昼に「天気の子」を観に行った。
やはり映画館で観るとその世界に入り込め、非日常の貴重な時間を過せる。
改めて、映画は映画館で観るべきだと痛感(若い頃は映画館に入り浸っていたのに)。
そして映画を見終った後の日常のつまらないこと。 

そもそも映画に”災害もの”というジャンルがあるアメリカでは、気象災害が主題の映画はたくさんあるのだが(ほとんどが竜巻。お勧めは「デイ・アフター・トゥモロー」)、
実際の災害数では世界に冠たる日本では、 残念ながらこのジャンルの映画にお目にかかれない。
あったとしても地震に限られ、気象がテーマになることはなかった。

そういう不満の中、 雲を見るのが好きだったという新海誠が「天気の子」を製作すると聞いて、彼だったらやってくれると思っていた。

まずは気象予報士として、天気が主題の映画を作ってくれて「ありがとう」と言いたい。

そしてもうひとつこの映画を身近に感じられるのは、IR田端駅南口の坂(右写真)※が重要なシーンとして複数回登場するのだが、この駅は自宅の最寄り駅で、幼少期によく父とこの坂で電車を眺めていた(幼少期の家の方がここに近かった)。
ウチの近所というとても見慣れた風景が映画に登場すれば、誰だってうれしくなる。

※映画を観た帰り、さっそく立ち寄った。もう”聖地”になっているのか、主人公ほどの年齢の男子が数人カメラを携えてたむろしていた(鉄道ファンかもしれないが)。

私自身は年齢的に高校生の主人公(森嶋帆高)に同一化できないが、テーマと場所でこれほど身近に感じる映画(しかもアニメ)はなかった。

まず、雨の描写ではすでに前々作「言の葉の庭」で定評があっただけに、そして雲の表現が前作「君の名は。」で評判だっただけに、それらの表現の進化形を楽しめた。
それにしても、真っ青な快晴のシーンを悲しい気持ちで見たのは初めて。 

巷の評では、個人的恋愛を東京の災害よりも優先する主人公の姿勢に批判があるようだ。
だが、今後の気候変動によって、東京の下町一帯が実際に冠水する可能性があることは忘れてならない(数年前に鬼怒川氾濫があったでしょ)。

江戸川区の洪水ハザードマップに「区から逃げて」と記してあることが話題になったが、それが厳然たる災害予想なのだ。 

つかぬまの晴れを喜んでいる中、思いもよらない大水害がやってくることをリアルに描いてくれたことは、防災上価値がある(防災の話ってリアリティがないと他人事に思われてしまう)。

東京の下町は、海抜が0mを下回り、そのど真ん中に荒川という大河川が家の屋根よりも高い所を流れている。
この荒川が、赤羽の水門から南で決壊したら、下町一帯(銀座まで)が数m

の高さで冠水する(民家は水没)。
0mを下回っているので海に排水するのも困難だ。

この冠水地帯はJR京浜東北線の東側に相当する。
だから田端駅の高台から冠水域を見渡すことになる(写真)。
映画のあの風景はありえることなんだ。
少なくとも、巨大隕石が落ちて町が陥没するよりは…。 

ついでにいえば、下町(墨東)は首都直下型地震の震源域とされている(津波もやってくるかもしれない)。

そういう災害危険性をきちんと描く映画が災害大国・日本では皆無だったのだ。
ということで、今度は防災士として、「ありがとう」と言いたい。 

ちなみにアメリカの”災害もの”でも、必ずラブストーリーを絡めてくる(そうしないと客が入らないから)。
この映画の客もラブストーリー部分ばかりに反応しているようだ。 

100%晴れ女は実現可能?に続く