精神科医として35年近くにわたり高齢者医療の現場に携わってきた和田秀樹さんは
「どれほど気をつけて努力したところで、ある程度の高齢になれば、認知症になることは避けられない。
老いを受け入れて、できることを大切にするほうが、よりよい人生を送れる」という――。

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MRIフィルムを見る医師
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです


☆「90歳でもこんなに元気に歩いています」はうらやましいのか

いま、老いに対する人びとのスタンスが、二極化していると感じます。

一方は、老いとずっと闘いつづけなければならないと考える、「アンチエイジング派」です。
いつまでも若々しくありたい、老け込みたくない、
寝たきりや認知症にならないようにしたい、と考える人たちです。

健康食品のコマーシャルで、「90歳でも、こんなに元気に歩いています」、
「人間、心がけしだいで、いくつになっても若くいられます」と語る人たちを見て、
「私もそうなりたい」と思う人も多いことでしょう。


もう一方は、その対極の反アンチエイジング、「自然に老いる派」です。
50歳そこそこで早くも「自然に歳をとりたい」と、
反アンチエイジングを公言する女性芸能人も見かけます。

90代の女性脚本家が、認知症になって生きることをよしとせず、安楽死を望む一方で、
50代の女優が、早々に老化を受け入れる姿勢を見せているというのは、
何やら奇妙にも思えます。

いつまでも老いと闘いつづけるべきという考えのもと、
美容医療やカツラの装着にも意欲的で、アンチエイジングに余念がないグループと、
「ボトックス注射で、しわをとるなんて許せない」と批判したり、
「ヅラ疑惑」と揶揄したりするグループに二分されている現状があります。