蟋蟀庵便り

山野草、旅、昆虫、日常のつれづれなどに関するミニエッセイ。

彼岸花、立つ」

2020年09月14日 | 季節の便り・花篇

 庭木の奥に沈み込んだ夜の帳を、「チン、チン、チン♪」とカネタタキが叩く。アブラゼミやクマゼミの喧騒は途絶え、昼間のツクツクボウシの声も、朝夕のヒグラシの声も次第に遠くなっていく。

 台風一過、俄かに秋風が立った。つい先頃までの体温並みの日々が夢のように、早朝の散策が肌寒く感じられるほど、秋の走り込みは韋駄天だった。
 青空に漂う片雲を掠めるように、ウスバキトンボが秋風に戯れていた。子供の頃には、盆トンボと言っていた。お盆の頃から一気に群れが濃くなり、手が届く高さを飛び回る。中学生の頃、夏休みの校庭に群れるウスバキトンボを帽子で叩き落とし、翅と頭と尻尾を千切って、胸の部分を食べる友人がいた。曰く「今年のトンボは旨くない!」彼は後に医者なり、徳島で大学教授を全うした。卒業以来再会したのは、55年振りだったろうか?

 ちょっと雑学……爆発的に群れが濃くなる理由が、ネットに書かれていた。改めて、自然界の逞しさに唸る。
 ……ウスバキトンボのメスの成虫の蔵卵数約29,000は、ほぼ同体長のノシメトンボの蔵卵数約8,800の3倍以上である。また十分に摂食しているメス成虫が1日に生産できる成熟卵は約840個で、産卵数の多さが日本における数か月での個体数急増を可能にすると考えられている……
 雨あがりの水溜まりや、車の窓ガラスに水と錯覚してチョンチョンと尻尾を落として産卵する姿は、今も変わらない。

 来年1月18日で切れる自動車運転免許証更新のための、「後期高齢者認知機能検査」を無事終えた。57年目の更新、そして多分最後の更新である。私の運転歴は、85歳60年をもって閉じる……つもりである。
 福岡試験場で3人掛けのテーブルに一人ずつ、4教室に分かれておよそ30分の検査である。住所・氏名・生年月日の記載から始まる屈辱的というか、ちょっと切ないテストではあるが、すでに3度目で考え方も変わった。得点にこだわる「試験」ではない。あくまでも自分の記憶力・認知力の程度を正しく理解するための機会を、僅750円でやっていただけると思えば、むしろありがたい「検査」である。
 さすがに、前回の97点は出来過ぎだろう。初めての時は92点だった…かな?……それを忘れている程のこの3年間の自覚からすれば、それなりの覚悟はしていたが、何とか90点をいただいた。十分満足である。
 「100点取れる要領がある」という人もいるが(本当に彼は満点を取っている)、要領でいい点を取っても意味がない。自分を過信して事故を起こすのは、多分こういう人間だろう。
 幸い49点未満で「認知症専門医」の診断を求められることもなく、試験場の駐車場から過去2回世話になった自動車学校に電話し、後期高齢者講習2時間コースを予約した。幸い、最短で10月22日が取れた。(因みに、76点未満だと3時間講習となる)
 
 韋駄天走りの秋風の中で、庭のあちこちに白い彼岸花が立ち始めた。まだ蝋燭のような細い首を、庭木の間から20本ほどが伸ばし始めている。「未だ曽てない」ほど気象庁に脅された巨大台風10号も呆気なく過ぎ、ただ秋を呼び寄せてくれただけだった。念入りに準備した台風対策の一部は、シーズンが終わるまでこのままにとどめておこう。

 馬肥ゆる秋の深まりを待たず、コロナ籠りの無為徒食の日々が体重を増やし、気付いたら標準体重を2キロも超過していた。
 敢えて「ストレス太り」と言おう。アベ去って、スガ来たる!アベ臭芬々、何一つ変わらない!!ブログネタも尽きない!!!無駄に野合を繰り返す野党に期待することも出来ず、まだまだストレスの日々が続くことだろう。

 そうだ、高原に、秋を探しに行こう!
                         (2020年9月:写真:白い彼岸花立つ)
  

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