丁寧で端正な生き方、予告編でそんな感じがした。しかも舞台に神戸とその周辺のあちこちが選ばれているというのでこれは観ておかないと。
創業者の祖母が営んでいた仕立て屋を継いだのは孫にあたる市子。その丁寧な仕事ぶりで地元の顧客に評価されている。そこへ彼女の服のブランド化を提案する大手デパートの社員藤井が現れ説得のため通い詰めるが、彼女の頑固さは一筋縄ではいかない。通っている間に彼女と顧客の様々な関わり方を知る藤井。彼の説得に自分の中に変化を見つける市子。
オーダーメードがあまり身近でない世代にとってはその丁寧な仕事ぶり、職人気質などは憧れである。また一度仕立てたもののサイズの変更など何度も仕立て直しする、ものを大切にする姿勢にも共感できるものがある。しかしその手間暇にかかる費用は、などと考えてしまったりもする貧乏人の悲しさ。仕立ててもらった服を着て一堂に集う夜会の場面もレトロで美しいのだがなんだか気恥ずかしい。
別に人の生き死ににかかわる映画ではないのに主人公と説得役の思い入れの強さに圧倒されなんとなく重く感じてしまう。挿入されるチーズケーキやお団子の話も文字通り胃に重かった。自分では物を捨てない大事にする世代の人間だと思っていたが案外ファストファッションに毒されていたのだった。丁寧で端正な暮らし方ってけっこう大変なのだ。
観終わってから、ロケ地を紹介したポスターを見ていたら、あの夜会が撮られたのが意外な場所と知りびっくりしたのだった