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ズッコケ 脅威の大震災/那須正幹

2007年09月24日 20時52分21秒 | 読書歴
■ズッコケ 脅威の大震災/那須正幹
■ストーリ
 ハチベエ、ハカセ、モーちゃんのズッコケ三人組が住む稲穂県が
 震度7の大地震に襲われた。三人は無事に危機を脱出し、避難所で
 再会する。大震災の中で活躍する三人組の心と行動を描く。

■感想 ☆☆☆☆
 ズッコケシリーズ37作目。
 阪神大震災で被災した子どもたちとの文通から、「ズッコケ三人組に
 震災を体験させます。」と約束した那須先生の子どもたちとの約束の本。
 大震災を経験した三人がそのショックを乗り越え、避難所で、
 自分のため、そして自分の大事な人たちのため、周囲の人たちのために
 懸命に考えて行動する様子を描いている。

 私は神戸から遠く離れたところに住んでいたため、メディアを通して
 しか、大震災の様子を知ることができなかった。メディアを通すと
 どうしても正確には伝わらない。神戸の人たちは、今、映像を見て
 私が想像している数倍、数十倍も大変だろうと分かってはいた。
 そこまでしか、私は分かることができなかった。

 この本でその大変さがほんの少し、具体的に分かった気がする。
 それは、新聞やニュースで知ることができるような、家が何万軒
 壊れたとか、人が何千人怪我したとか、何千人もの人が亡くなったとか、
 そういった数字のすごさではない。
 実際に生活している人たちが何に不自由な思いをして、
 どういったところで気苦労を抱えて、どこでストレスを感じていたか、
 そういった人の気持ちの上で大変な部分だ。
 例えば、学校の体育館に避難をしている人たちに対して
 避難所を出てアパートを借りた被災児童が「あの人たち、いつまで
 学校にいすわるつもりなんだろう。」と言うくだりがある。
 僕たちはすぐにアパートを見つけたのに、なんで彼らは出て行かない
 んだろう、避難所にいたほうが食事ももらえるし、全国からいろんな
 ものが送ってくる、そっちのほうが楽なんじゃないか、と邪推を
 する。
 那須さんはそういった避難所の人たちに対しての非難に対して
 三人組に「そんなひどいこと言わなくても。」と安易な反論を
 させない。三人は冷静に状況を見つめ、避難所の人たちが体育館を
 汚していること、トイレを綺麗に使わないため、異臭が漂っている
 こと、そういった不満を持つ人たちがいるのも無理はないことに
 気付かせる。その上で、自分たちにできることを考えさせるのだ。

 どちらの言い分も分かる。でも、こんなことで雰囲気が悪くなるのは
 一番、イヤだ。こんなときだから、助け合わなきゃいけないのに。
 だから、三人にできることをさせる。みんなが汚したトイレを
 三人に掃除させる。争いの素が少しでも少なくなるように。

 なるほどなと思った。あの震災から10年も経って、改めて
 あの震災によって神戸の人たちがどれだけ大変だったのか
 命の危険という大きな危機が与えたストレスの後に、日常生活を
 自由に送ることができないストレスがずっと続いていたことに
 気付くことができた。そして、そのストレスが具体的には
 どういった状況で起こるのか、その一片を垣間見れた気がする。

 普段はいい加減で決してマジメな子たちではない三人が
 周囲の人たちのために何ができるのかを考え続ける姿勢が
 爽やかな作品。