のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

クローズド・ノート/2007年日本

2007年10月05日 01時52分40秒 | 映画鑑賞
■クローズド・ノート
■ストーリ
 女子大生の香恵(沢尻エリカ)は引っ越しの際、前の住人が
 忘れていった1冊のノートを見つける。
 彼女はバイト先の客として出逢った画家の石飛(伊勢谷友介)に
 恋をするが、相談相手の親友ハナ(サエコ)は留学中で
 連絡もままならない。もやもやした気持ちを紛らわすように
 香恵はノートを開くと、挟まれていた写真にノートの持ち主
 伊吹(竹内結子)がいた。
■感想 ☆☆
 あまりに沢尻さんへの感情的な批判が多く、なんだかいたたまれない
 気持ちになって、映画を見に行ってしまった。彼女に対する反感が
 映画の評価を根拠なく、そして途方もなく下げている気がして。
 「表舞台に立つ」仕事とは、これほどまでに自分の言動に責任を
 持たなければいけないのだということ、自分に返ってくるだけでなく
 自分が関わったものすべてに対して影響力を持つのだということを
 目で見える形で学べている。

 で、映画。
 残念ながら、何が伝えたいのかよく分からなかった。本当に残念。
 ここで格好よく「彼女の言動に振り回されず、作品を見てあげようよ。」
 なんて主張してみたかったのに。
 何が伝えたいのか、どこに主眼を置いているのかがよく分からず
 帰ってから、映画情報サイトを見てみたところ、このお話は
 「前の住人が忘れていった1冊のノートを読んだことによって、
 ヒロインが真実の愛に出会うまでを描く感動作」だったらしいと分かった。
 そう言われてみれば、作品中、ノート(日記帳)を読んだヒロインが
 日記帳を書いた女性について
 「私は、彼女から人を愛することを教えてもらいました。」
 とつぶやき、その呟きを聞いたバイトの先輩が彼女にこう囁く。
 「あなた、ホンモノの恋を知ったのね。」

 バイトの先輩は、なぜ、彼女が「ホンモノの恋を知った」のだと
 感じたのだろう?そもそも「ホンモノの恋」って何だろう?
 彼女は一体、どこが変わったのだろう?

 香恵はアパートの前の住民が書いたノートを読み、彼女の考え方
 生き様に感銘を受ける。彼女のように人を愛したい、彼女のように
 夢をかなえたい、彼女のように人と接したい、と憧れる。
 この映画はそこまでの話なのだ。まだ香恵は何ら変わっていない。
 感銘を受けた後に、香恵がどう動くのか、どう変わるのかは
 何一つ描かれていない。だから、清々しい終わり方のような雰囲気を
 漂わせた映画のラストに今ひとつ納得がいかなかった。

 まだヒロインは何も変わっていない。クラブ活動のマンドリンの
 稽古に身が入らず、満足な演奏ができなかったところから
 何も変わっていない。
 バイト先のオーナーが精魂込めて作っている万年筆ひとつひとつの
 違いに気付けないでいる状態から何も変わっていない。
 親友の彼氏のことで、親友とぎくしゃくしてしまったところから
 何も変わっていない。何の変化も見せず、どれも決着をつかせることなく
 終わってしまっているのに、こんなふうに清々しい雰囲気で
 「彼女は成長しました」という終わり方をされても釈然としないのだ。

 とは言え、ヒロインはふたりともとても魅力的だった。
 生徒を暖かく柔らかい笑顔で包み込むように見守り続ける姿が
 とても魅力的だった竹内さん。生徒たちの前では、いつも暖かい眼差しで、
 凛とした姿を見せ続けるのに、好きな人の前ではひとりの女性となり、
 恋に一喜一憂する姿がかわいらしかった。こんな女性になりたい、と
 香恵に思わせるストーリ展開に、彼女の魅力が説得力を持たせていた
 と思う。
 そして、日記帳の言葉に共感し、憧れ、励まされる様子を初々しく
 演じていた沢尻さん。役を持たないときの彼女の姿を見るたびに
 彼女の演技力のすばらしさを実感する。今回も彼女は片想い相手への
 一途な想いを視線で、声で、その表情で存分に表現していた。
 彼への想いを胸に抱え、不安になったり、喜んだり、寂しくなったり、
 どきどきしたり、切なくなったり、そういった恋する女性の不安定な
 心を美しく演じていた。彼女の声と涙の美しさが、この作品を
 輝かせていたと思う。
 ノスタルジーあふれる映像がヒロインふたりの魅力を
 更に際立たせていたにも関わらず、話の細部が作りこまれておらず
 説明不足の部分が多々あり、ストーリの中にすんなりと入り込め
 なかったのがとても残念だった。