のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

誰か/宮部みゆき

2007年10月15日 21時24分50秒 | 読書歴
■誰か/宮部みゆき
■ストーリ
 今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、義父であり
 コンツェルンの会長でもある今多義親からある依頼を受けた。
 それは、会長の専属運転手だった梶田信夫の娘たちが、
 父についての本を書くため、相談にのってほしいというものだった。
 梶田は、石川町のマンション前で自転車に撥ねられて亡くなり、
 犯人はまだ捕まっていない。依頼を受けて、梶田の過去を
 辿りはじめた杉村が知った事実とは。

■感想 ☆☆☆☆
 愛する妻と娘に囲まれて幸せに、けれども孤独に生きている
 主人公杉村さん。彼があまりに幸せで、孤独を感じてはいるものの
 今の幸せを大切にしたいと願っている優しい男性で、
 だから推理小説にありがちな殺伐とした描写はない。
 杉村さんは義父の運転手の娘達に頼まれて、彼の過去を追う。
 彼が新たに知る事実は彼のフィルターを通して伝えられるため
 どこまでも優しく暖かい。

 それなのに。

 それなのに、最後の後味の悪さに驚いた。人の弱さに衝撃を受けた。
 悪い人よりも弱い人のほうが確実に性質が悪い。
 悪い人は滅多に存在しない。けれども弱い人はごろごろいるのだと思う。
 巷で起こっている事件のほとんどは「弱さ」ゆえに引き起こされている
 ものなのだと思う。自分を守るためにがむしゃらに周囲を傷つける。
 自分の弱さから目をそらすために、嘘をつく。自分を傷つけないために
 周囲の人の幸せを奪う。
 そういった「人の弱さ」が「卑しさ」となって、私を襲った。

 読み終わった後にひたすら哀しい気持ちになる。
 息を呑んで読んだラスト30ページの後味の悪さは
 この一文に集約されていると思う。

 「男と女はね、くっついていると、そのうち品性まで似てくるもんだよ。
  だから、付き合う相手はよくよく選ばなくちゃいけないんだ。」

すきまのおともだちたち/江國 香織

2007年10月15日 21時08分53秒 | 読書歴
■すきまのおともだちたち/江國 香織
■ストーリ
 「過去の思い出って淋しいのね」
 旅先で出会った勇ましい女の子と私との一風変わった友情物語。

■感想 ☆☆*
 本が好きな人、無意識のうちに空想の世界に入り込める人なら
 誰でも楽しめるにちがいない、と確信するお話。
 みねゆらさんというイラストレーターの挿絵が美しい本でした。
 青い色調が印象的な本。かわいらしいのだけれど、どこか寂しげな
 印象を与える挿絵です。

 新聞記者としてバリバリ働き、恋人ともうまくいっている女性。
 恋人との待ち合わせの場所に向かっていたのに、ふと気がつくと
 まったく別の世界で迷子になっていたヒロイン。途方に暮れていた
 ヒロインを自分の家に招待してくれた女の子との友情物語が
 綴られます。
 ファンタジーなのに、友情物語なのに、最後までどこか寂しい
 気持ちから抜け出せませんでした。このお話のように唐突には
 訪れないけれど、私達が生きる現実世界でも、人の出会いや別れは
 私達がコントロールできるものではなく、嫌が応なく訪れることを
 思い出したからかもしれません。