持久走

私が通っていた小学校は、体育に力を入れているモデル校だった。

毎年、持久走があり、私はこれが苦痛でたまらなかった。

平地を走るならともかく、山の麓の公園から、山を越えて反対側まで走るのだ。

山道は、一人がやっと通れるようなクネクネ道で、真下は谷になっている。


持久走があるのは冬。

前の晩、窓をあけて、パジャマをめくってお腹を出して寝る。

朝、熱が出て走らなくても済むように、だ。

しかし、一度だってそうなったことはなく、渋々走ることになる。


子供の頃の思い出の場所は、多くの場合、記憶より小さかったり

狭かったり、近かったりするものだけれど、ここだけは違う。

つい数年前にも持久走で走った山に行ったのだが、

よくこんなに走ったもんだ、と呆れた。

山に登る前に、麓の公園を何週か走るのだけれど、その公園すら

こんなに広かった？と思う。


嫌だけどやらなくてはならないことが、

子供の頃には山のようにあって、私は大人になったことを心から感謝している。

宿題がなくなって何十年もたつのに、いまだに宿題がないことを心底幸せに思うのである。





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