太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

善意のおしうり

2015-09-12 08:10:44 | 日記
2件隣りのヘレンに、すき焼きを食べにこないかと誘われた。

ヘレンは沖縄生まれの日本人で、ご主人はマウイ生まれ。

平日の夜、夫と二人でお邪魔した。


食卓には大きな鍋がふたつ並んでいて、ひとつはヘレン夫妻用、

もうひとつは私たち用で、大皿に盛られた具もふたつに分けてあった。

うちには卓上コンロもないし、鍋もないので、こんなふうにすき焼きを食べるのは久しぶりだ。

世間話をしながら美味しくすき焼きをいただいて、

私たちが持参したデザートに取り掛かる頃、話の流れが変わってきた。


ご主人のジョージが話の主導権を握って、

「20歳の頃の自分に何か言うとしたら、どんなことを言う?」

なんて話から始まった。

スピリチュアルなことが好きな人なのかなと思いつつ、ふとジョージの背後の柱を見ると、

木製の十字架がかかっている。

これはもしかしたら・・・・


神だ、天国だ、地獄だ、話はよくわからないたとえ話をいくつも重ねながら

そっちの方向にずんずんと続いてゆく。


私の夫は生まれたときに、他の赤ん坊と同じように洗礼を受けてクリスチャンなのだが、

15歳のときに「教会には行かない」と親に宣言をしてから、クリスチャンとは勝手に縁を切った。

「神は教会なんかにいない、海や山、そこいらじゅうに神はいるんだ」

という夫の意見に私は激しく同意する。

私はカトリックの学校で6年間、聖書を学んだけれど、

私の心に響いてくるものはなかった。



ジョージが何を言いたいのか、私にはさっぱりわからないまま、3時間以上が過ぎていた。

夫がうんざりしているのも、ひしひしとわかる。

ジョージはいよいよ乗りに乗って話まくる。

とそのとき、

「話の途中だけど、もう10時過ぎてるし、明日も仕事で5時起きだから失礼するよ」

夫が言った。



ジョージ「5時??そんなに早起きしてるなんて、悪かったね。

僕たちはバプテスト教会に毎週日曜に行ってるんだけど、よかったら一緒にどう?」


ヘレン「そうよそうよ、お昼前に終わるから、終わったらランチでも食べましょうよ。空港の近くでね・・」


ここで一発、はっきりと断ってくれるんだろうと期待して夫の発言を待った。


夫「ああそうだね、それもいいね」



なんだとうッ!!思ってもないことを・・・・・

NOと言えるアメリカ人じゃないのか、おまえは!!



ヘレンは用意していたCDを5,6枚私に手渡した。

「これね、沖縄のおかあさんが送ってくれたんだけど、すごくいいお話ばっかりなの。

車の中で聞いてみて。まだたくさんあるのよ」

そして夫には教会で出している、厚いが小ぶりの冊子を渡した。



玄関を出て、家に向かう道すがら、ふたりとも深いため息が出た。

「ものすごく疲れた」

「私も」

「すき焼きは美味しかったけど」

「そう、美味しかったけど」


話の中で、私たちが信じるものと、彼らが信じるものが違うことは明白だった。

私たちが、信じるものを探しているのならともかく、

そうではないのに、どうして彼らは執拗に自分の信じるものを押し付けようとするのだろう。

そんなつもりはなく、

君たちが桃を持っているのは知ってるけど、こっちの桃のほうがずっと甘くて美味しいよ、

そういう感じで言ってくれているのかもしれない。

それにしたって、この桃がいい、と言っているのだから、それでいいではないか。


ヘレンに「教会に来てね」と言われたのは初めてではない。

それでも行かない、ということは、私には興味がないということで、

どうしてそれでも誘い続けるのだろう。



人を救いたい気持ちはわからないでもないが、救われたい人だけ救ってあげたらどうか。

私は私の信じる私なりの神があり、それは宗教でもなんでもないけれど、

純粋に宗教を信じる人々を、私はどうこう思わない。

誰が何を信じていても、それで幸せならいいんじゃないか、と思う。



家に戻り、夫はもらった冊子をそのままゴミ箱に捨てた。

私はCDを、居間の引き出しに入れた。

「私には必要ないみたいだから、ほかの誰かにあげて」

と言って、ヘレンに返そうと思っているけれど、果たして私はそうするだろうか。









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