なにかの事件があり、刑事が容疑者の周辺を聞き込みにまわるとする。
夫婦間に問題を抱えている人は、「どうも夫婦仲がぎくしゃくしていたようですよ」と言い、
お金に問題を抱えている人は、「お金のことでもめていたみたいですよ」と言う。
というようなことが、何かの本に書いてあった。
なるほど、人は自分が持っているものを人に映して見ているのか。
毎日、鏡だらけの世界で生きているのだろうな。
醜いもの、受け入れがたいものに出会ったとき、私たちはつい、
『見ているそのもの』を何とかしようとするけれど、
それはまるで、鏡に映った自分の顔の汚れを、
鏡を拭いてキレイにしようとしているようなもんだ。
先日、日本人のお客様が職場に来て、フリーペーパー(無料の情報誌)の置いてある場所を尋ねた。
「エスカレーターを上がって正面の、ラーメン屋さんの横の壁際に台があって、そこにあります」
「あ、そ」
しばらくして、その方が戻ってきて、私を見つけて言った。
「ありませんよ、そんなもの」
「あるはずですよ?」
「ないわよ。居酒屋しかなかったわよ」
「居酒屋?(そんなもんあったっけ・・・)」
「とにかく一緒に来てよ、ほんとにないんだから」
私はとっても手が離せなかったのだけれど、その方は引き下がりそうにない。
仕方がないので一緒に行った。
フリーペーパーは、ちゃんとそこにあった。
「あ、ここのこと?私はエスカレーターを上がってすぐだと思って居酒屋しか見てなかった」
エスカレーターを上がったところには、フードコートで買った食べ物を食べるテーブルが並んでいる。
その方は、そのことを「居酒屋」と思ったのだろう。
「エスカレーター上がってすぐって言いましたよね?」
「正面の壁の、ラーメン屋さんの横って言ったと思いますけど・・・」
するとその方は憤然として言った。
「いいえ、ラーメン屋さんだなんてひとっことも言わなかったわよ。
そう聞いていたらわかったし、それに・・」
まだまだ言い募りそうだったので、
「あ、でもここに情報誌が揃ってますから、それでいいですよね」
と言って、その場をあとにした。
その方はとうとう、ありがとうの一言も言わなかった。
仕事に戻ってから、今あったことを同僚に話した。
ストレスは発散してしまう、というのが私のやりかただ。
アメリカ人の同僚は、
「アメリカ人全員が横柄なわけでもないように、日本人にもそういう人がいるんだね」
と言った。
ちょっと余談。
ここで働いていて思うのだが、
アメリカ人の場合、相手がアメリカ人であっても、英語をあまり理解できなさそうな人であっても、
態度を変えることはあまりない。
しかし日本人の場合、相手がアメリカ人だと比較的行儀がよくて、
日本語が通じる相手だと、途端に横柄になったりすることがある。
言葉の問題なんだろうけど。
発散したあと、私の鏡に映ったもののことを思い、
気が滅入ってきた。
私はあんなものを持っているんだなあ。
消化のよくないものを食べたあとのように、心がいつまでももたれていた。
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夫婦間に問題を抱えている人は、「どうも夫婦仲がぎくしゃくしていたようですよ」と言い、
お金に問題を抱えている人は、「お金のことでもめていたみたいですよ」と言う。
というようなことが、何かの本に書いてあった。
なるほど、人は自分が持っているものを人に映して見ているのか。
毎日、鏡だらけの世界で生きているのだろうな。
醜いもの、受け入れがたいものに出会ったとき、私たちはつい、
『見ているそのもの』を何とかしようとするけれど、
それはまるで、鏡に映った自分の顔の汚れを、
鏡を拭いてキレイにしようとしているようなもんだ。
先日、日本人のお客様が職場に来て、フリーペーパー(無料の情報誌)の置いてある場所を尋ねた。
「エスカレーターを上がって正面の、ラーメン屋さんの横の壁際に台があって、そこにあります」
「あ、そ」
しばらくして、その方が戻ってきて、私を見つけて言った。
「ありませんよ、そんなもの」
「あるはずですよ?」
「ないわよ。居酒屋しかなかったわよ」
「居酒屋?(そんなもんあったっけ・・・)」
「とにかく一緒に来てよ、ほんとにないんだから」
私はとっても手が離せなかったのだけれど、その方は引き下がりそうにない。
仕方がないので一緒に行った。
フリーペーパーは、ちゃんとそこにあった。
「あ、ここのこと?私はエスカレーターを上がってすぐだと思って居酒屋しか見てなかった」
エスカレーターを上がったところには、フードコートで買った食べ物を食べるテーブルが並んでいる。
その方は、そのことを「居酒屋」と思ったのだろう。
「エスカレーター上がってすぐって言いましたよね?」
「正面の壁の、ラーメン屋さんの横って言ったと思いますけど・・・」
するとその方は憤然として言った。
「いいえ、ラーメン屋さんだなんてひとっことも言わなかったわよ。
そう聞いていたらわかったし、それに・・」
まだまだ言い募りそうだったので、
「あ、でもここに情報誌が揃ってますから、それでいいですよね」
と言って、その場をあとにした。
その方はとうとう、ありがとうの一言も言わなかった。
仕事に戻ってから、今あったことを同僚に話した。
ストレスは発散してしまう、というのが私のやりかただ。
アメリカ人の同僚は、
「アメリカ人全員が横柄なわけでもないように、日本人にもそういう人がいるんだね」
と言った。
ちょっと余談。
ここで働いていて思うのだが、
アメリカ人の場合、相手がアメリカ人であっても、英語をあまり理解できなさそうな人であっても、
態度を変えることはあまりない。
しかし日本人の場合、相手がアメリカ人だと比較的行儀がよくて、
日本語が通じる相手だと、途端に横柄になったりすることがある。
言葉の問題なんだろうけど。
発散したあと、私の鏡に映ったもののことを思い、
気が滅入ってきた。
私はあんなものを持っているんだなあ。
消化のよくないものを食べたあとのように、心がいつまでももたれていた。
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