太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

不機嫌なめだまやき

2017-03-05 13:05:40 | 食べ物とか
実家の母が作る目玉焼きは、(改めて書くと、すごい名前)

フライパンに卵を割り、ほんの少し水を入れて蓋をする。

すると、蒸気で黄身の表面がうっすら白くなった半熟の目玉焼きができる。

結婚して家を出ても、私はずっとそのやりかたで作ってきた。


しかし、今の夫と出会い、

初めて彼が目玉焼きを作ったときには驚いた。

片面が焼けると、それをひっくり返してしまうのだ。

そうすると、どっちが上だかわからない、両面が焼けた目玉焼きになり、

それはもはや「目玉焼き」ではない。

どうりで、日本語でフライドエッグのことを「目玉焼き」というのだと説明したとき、

怪訝な顔をしていたわけだ。

ここでは、外食で食べるフライドエッグも同じである。



私はその、繊細さのかけらもない目玉焼きが好きになれなくて

母ゆずりのやりかたを通していたが、それも日本にいた間のことであった。

両面焼けば、蓋を洗わなくて済むし、らくちんだ。


もう蒸気で蒸すことはしなくなったけれども、卵を焼くたびに母の目玉焼きのことを思う。

そして決まって思い出すのは、私が小学生の頃、その日はなぜか朝から不機嫌で

お弁当つくりや朝の支度で忙しい母が焼いた目玉焼きの黄身が硬くなったのが嫌だと

うだうだと文句を言った。

イライラしている気分をどうしようもできないことが、また気持ちをむしゃくしゃさせる。

黄身が硬いなんてのはどうでもいいことで、それはただの八つ当たりなのだ。

母は怒るでもなく、それなら自分で作ればいい、と穏やかに言った。

そのあと私はどうしたのだったか、忘れてしまった。

私が母だったら、

「作ってもらって何えらそうなこと言ってんのさ!」

とフライ返しのひとつも投げつけたい気分だろう。


昔、妹の子供がグズグズとわからないことを言ったときも、

はたで見ていた私はカッとなるのに、母はじょうずにとりなして

「自分のしていることをコントロールできないだけだよ」

と言うのだった。

もちろん、母だってそういうときばかりではないのだけれど、

私に子供がいたら、毎日怒鳴って過ごすんだろうと思う。

うまくできてる。



今朝も、母に感謝しながら、目玉焼きをひっくり返す。





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