太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

フランス人

2019-10-06 19:01:51 | 日記
フランス人の同僚がいる。仮にMとしよう。
数か月前に働き始めてから、Mはかなりの存在感でもって店に君臨している。
Mは岩よりも頑固で、絶対に自分の意志を曲げない。
迎合しない。
思ったことはストレートに発言する。
協調することにこだわらない。
私が知るフランス人といえば、ギャラリーのラティーシャだが
時々行って、おしゃべりをするぶんには、愛情の濃い素敵な人だ。
けれど、凛とした感じ、意志がすごく強そうな感じは、きっと長く一緒に過ごしたら
人と摩擦を起こしそうだ、とは思う。
多少乱暴な言い方をすれば、意志が強く、孤立を恐れない傾向は
フランス人がもつ民族的なものであるかもしれない。

Mは、仕事熱心ではあるが
自分が納得しないことは、たとえ求められることであっても絶対にやらない。
その代わり、自分がこうだと思ったことは、嫌われても押し通す。
そして、主張はしっかりとする。

たとえば、入社して一定期間がたつと、みんなキャッシャーになる訓練をする。
100にも及ぶ商品の価格を覚えるのだけれど、Mはそれを頑としてやらない。
英語は自分の第二言語であることと、価格を覚えるような無駄な時間は自分にはないというのが理由だ。
マネージャーが言った。
「シロを見てごらんよ、あんな英語でどしどしやってるじゃないの(あんな、が余計だ)
それに価格なんか仕事しながら覚えればいいでしょう」
それでもMはやらない。

ある朝、Mは私のところにきて、私がいくらもらっているか聞いたので驚いた。
「言うはずないよね?そんなこと?」
「なんで?」
「なんでって、あなたには関係ないし、そういう話はしないものだよ」
「そうなの?昇給してほしいってマネージャーに言ったら、
ダメだと言われたから、じゃあシロはいくらもらっているか聞いたら教えてくれなかった」
私が唯一自分と同じ外国人なので、参考にしようということか。

ペアで仕事をすることになったとき、
よかれと思ってやった仕事を、
「私には考えがあって、あれはそのままにしておいたんだから
勝手にあんたのやり方でやらないで!わかった?」
と、すごい剣幕で言われたこともあった。

まだまだそういう話はゴマンとある。

そんなわけで、誰もMと仕事をしたがらなくなった。
けして悪い人ではないのだ。
むしろ、人間としては良い人だといえる。
ただ、強烈。
Mの一挙手一投足を、個人的に受け止めてしまうとストレスになるし、
つい悪口を言いたくなってしまう。
だから私は10歩ぐらい引いて、Mを観察するようにしている。
Mのように、自分の正しさですべてをコントロールしようとしたら
さぞや生きづらいことだろう。


親切で穏やかで楽しい人ばかりに囲まれて暮らしたいと思うけれど
そうでない人に出会うとき、私は自分がどんな人間なのかを知ることができる。