太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

セーラーカラー

2019-10-14 10:06:59 | 日記
大昔、生成りの麻に、細い水色のストライプが入った、セーラーカラーの
半袖のトップを持っていた。
社会人になったばかりの当時の私にとっては麻の服は高い買い物だったように思う。
その服はお気に入りで、29で結婚したときも、持って行った。
30代になり、その服は着れなくなった。
それでも私はその服を捨てきれずに持っていた。

なぜ着れなくなったのか。
それは日本独特の、年齢に対する厳しい定めのようなものである。
私は着たいのに、まわりの雰囲気が、そうはさせない。
30過ぎたら、ちょっとセーラーカラーは着れないという不思議な文化。


あれは忘れもしない35の年である。
きれいなブルーや赤が入った、タータンチェック風の巻きスカートをはいていた私に、当時の夫が言った。
「それって、もう年齢的にキツイんじゃない?」
その巻きスカートは私のお気に入りで、
真っ赤なタートルネックのセーターと合わせるのが特に好きだった。
「あなた、けっこうそういう若作りの服着てるけど、変だよね」
そのトドメの言葉に逆上した私は、巻きスカートもセーラーカラーのトップも、
好きで捨てられなかった服もみんなまとめてごみ袋に突っ込んで捨てた。


その場の感情にまかせて、どりゃ!!とばかりに事を起こしてしまうというのは
私の愚かなところである。


今になって、思う。
あのとき、私はまだ35で、じゅうぶん若かった。
巻きスカートも、赤いタートルネックもまったく問題なかったと思う。
なぜ、まわりの雰囲気や、誰かのつまらない一言で
好きなものを諦めたり捨てたりしたのだろう。

あれから20年近くたったが、もし今、あの巻きスカートやセーラカラーの麻のトップがあったら、堂々と着ている。
あれらは本当に好きな服だった。
自分が好きで、幸せな気分になるものを着ても誰もジャッジしない。
そういう国に住んでいることは、なんと自由なことだろう。
私が何を着ても、
「すてき、かわいい、似合う」
と言うように訓練されている夫がいることは、なんと恵まれたことだろう。


勢いで捨てたセーラーカラーのトップは、今も鮮明に思い浮かべることができる。