職場にみえた、白人の小柄なおばさま。
レジスターの台の上に、買うものを並べながら
「これは息子」
「これとこれは、息子の嫁と孫」
「そしてこのちっさいやつはビル!」
と言って、ちっさいチョコレートを ドン! と台に置いた。
「ビルって誰?」
と私が聞くと、
「留守の間、犬の世話を頼んでる近所に住む友達。
電話すると、きっちり朝と夕方に餌やって、散歩にも2回いくって言うんだけどね」
「そういう友達がいてよかったですね」
するとそのおばさまは身を乗り出して言った。
「とーんでもない!
ビルは、私が家につけたカメラのこと、忘れてんのよ。
どこからでも携帯電話で家の中がチェックできるやつ。
ビルは1日に1回だけふらっと来て、散歩だって数分で戻ってくる。
なーにが1日に2回きっちり、だわよ。
まったく頭にくるったら・・・・
だからお土産なんかこれでじゅうぶんだってのよ」
おばさまは怒っているが、
でもビルとは良い友達で、心底からは怒っていないのがわかる。
カメラがあることを忘れて、適当に犬の世話してとぼけているおじさんを想像し
なんだかおかしくて笑ってしまった。