太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

一人旅への片思い

2021-02-03 09:18:24 | 日記
一人旅をする人の旅行記を読むのが好きだ。
それも、泊まるところも決めずに気の向くままというバックパッカー的な旅。

私ほど、一人旅に向いていない人はいないと思う。
スーパー方向音痴で小心者で心配性。
この小さな島でも、初めて一人で行く場所は、うろうろ迷うのが嫌であらかじめ連れていってもらうほどの念の入れよう。
私は人を当てにしてふわふわと生きているので、情報を集めたり、ものごとを順序だてて進めることが苦手。
それに、美味しいものを食べたり、いい景色を見たら、いちいちシェアする人がいないとつまらない。

だからといって、団体旅行やパック旅行は苦手だ。
よく知らない人達と何日も行動を共にするのは気が重いし、用意された交通手段で言われるままに目的地に行くのは、楽ちんだけどつまらない。
切符の買い方を道行く人に聞いたり、行き先を決めたり、レストランを探したりする楽しさは格別だと思う。

だから私の現実的な理想の旅は、私よりもしっかりしている人と気ままにする旅、といえよう。



それなのに、というか、それだからなのか、一人旅に人一倍の憧れがある。
それはもう壮大な夢というぐらいの。


一人旅をする人に自分を重ねているから、女性でなければならない。
最近、見つけると手に取っているのは、作家の角田光代氏。
角田氏は30か国以上に一人旅をしている(今はもっと増えているかも)。
バックパックひとつで、泊まるところも決めない自由な旅。
しかし彼女はいうのだ。
一人で行くのは一緒に行く人がいないからで、どちらかというと団体旅行に向いている、と。
そんなことはないと思う。
団体旅行も一人旅もできる人が、世の中にはいるのだ。
私だったら、一緒に行く人がいなければ絶対に行かない。


安宿に泊まり、心の向くままバスや徒歩や電車で移動し、
1週間もいると地元の友達ができ、彼らと毎日を過ごし、次に移動する。
ロシアで怖い目にあったり、バリで「帰ってこれなく」なりそうになったり、
ものすごく親切な人にあったり、怪しい人にあったり。

ああ、こんなことができたらどんなにいいだろうか、と思いながら読む。
天地がひっくり返ったってできないのがわかっているのに、どうしてこんなに憧れるのか。
絶対に実らない片思いみたいに。



ハワイに移住する直前、私はそのたぐいの本を図書館で借りまくった。
名前は失念してしまったが、一人でインドに行った若い女性にいたく感動して、ファンレターまで書いたほどだ。
編集社に送ったメールには、ちゃんと本人からの返事がきて、さらに感動した。

ハワイへの移住は、ワクワクと同じ量だけ不安もあった。
私はすでに47歳になっていて、一人じゃないとはいえ、今更まったく生活を変えるのは、若さという勢いがないだけキツイ。
だから私は、自由に枠から飛び出した人達から、恐れを振り払う勇気が欲しかったのだと思う。







私は一人旅にこんなに憧れながら、今後も一人旅をすることはないだろう。

けれど、日本人がまったくいない社会に属し、
英語しか通じない相手とやり取りをし、電話をし、へこたれそうになりながら暮らす日々は、私にとっては一人旅に近いものかもしれない。
もちろん、夫もいるし、一人じゃ全然ないんだけど。

私にとって住みやすい日本を離れて、こんな島でジタバタ住んでいるというだけで、
人一倍の臆病者には上出来だと思うのである。