太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

ロー被服費

2021-02-09 13:49:16 | 日記
その日は暴風雨で、私はレインシューズにしているショートブーツを履いて仕事に行った。
屋内で仕事をしているぶんには、ショートブーツは必要ないので
濡れてもいいように持ってきたビーチサンダルに履き替えた。
それを目ざとく見つけた同僚が

「おー!スリッパー!!シロも立派なロコ(地元民)だねーー!!」
(ここではビーチサンダルはスリッパーである)

と言いながら、私の背中をはたいた。


ここの面接を受けに来た時、働いている人たちがビーチサンダルを履いていることに、私は正直驚いた。
制服であるノースリーブのハワイアンプリントシャツに合わせるボトムには、
ジーンズはダメとか、膝丈より長いものとか、いくつか制限があるのに、
足元はビーサンでいいとは・・・
その前の職場では、靴はちゃんと踵のあるもの、という決まりがあった。
この職場で働き始めて5年。
私はいつも、踵にストラップがついているような、一応ちゃんとしたサンダルを履いている。
暴風雨のその日が、私が初めてビーチサンダルを履いた日になる。


ハワイは全米でも生活費が高くて有名だけれど、もし被服費の統計があったら反対の順位になるのではないかと思う。

まず、冬服がいらない。
そして、きちんとした服装をする機会がない。

何年か前に、夫が、当時働いていた会社の代表で、
高校生に奨学金を出す表彰授与式に行くのについて行ったことがあった。
日本人の感覚だと、学校のそういう式にはスーツやワンピースに革靴だろう。
ところが、ステージに上がる子供たちは短パンにタンクトップにビーチサンダル。
観客席の保護者もほぼ同じで、今さっきまで家でテレビ見てたよね、という恰好だ。
ハワイの人々は、そういう意味で非常にフランク。


先日、友人と久々ウィンドウショッピングをしていたら、高級ブランドのウィンドウに、レザーのジャケットや毛皮を使った服などが飾られていた。
「あんな暑そうな服、誰が買うのかね」
私が言うと、友人が
「そんなの、寒いところから来た旅行者に決まってるさ」
と言った。
確かに。
その友人は以前、ワイキキのオフィスで働いていた時には、それでも一応はちゃんとした服装をしていたのだが、
転職したら、ジーンズとスニーカーで済んでしまうので、洋服を買わなくなったという。



ハワイでは、Tシャツとジーンズ、短パン、食事に行けるぐらいのカットソーやサンドレス、サンダルとビーチサンダルさえあれば生きてゆける。

日本から持ってきた、ちゃんとしたスカートやパンツは、高価だったことだし、
いつか着るかもと思って屋根裏で10年もお茶をひいている。

それは革靴も同じ。
デザインが気に入っているパンプスや、ローヒールの革靴を、捨てられずにとってあるのだけれど、
革靴を合わせるような服を着ない。

皮のバッグもしかり。
大枚はたいて買った素敵なバッグを持つような服を着ないし、
気候的にも、皮製品よりは合成皮革のほうが便利だし、自然素材のバッグのほうが心地よい。
高かった服やバッグが、そういうわけで屋根裏の住人となっている。
いつか諦めて、処分する日が来るのだろうか。


ハワイは全米で唯一、ビーチサンダルで車の運転が許されている州であるというのは、
ここがいかに気楽なところか、という証拠ではないかと思うのである。










陽気なアメリカ人

2021-02-09 10:22:50 | 英語とか日本語の話
職場の入り口から入ってきた、黒人の女性が着ていたTシャツに目が釘付けになった。

なに!?

白いゴシック体で、黒のTシャツにデカデカと書かれていた。
あまりにインパクトが強かったので、私は思わず「なに!?」と声に出して読んでしまった。
するとその女性は、笑いながら言った。

「You know what? That's interesting conversation.(そうそう、おもしろい会話になるんだよね、これが)」

「へえ、どんな?」

「『What dose that mean?』どういう意味?

 『 What!?』なに!?

『What dose that mean?』どういう意味よ?

『Thats why I   said  What!?』だから言ってるじゃん、なに!?

『I'm asking ,What dose that mean?』だからー、どういう意味って聞いてんの!

この繰り返しよー。だからこのシャツ好きなんだよねー、あはは!」


彼女は身振り手振り、おおげさに台詞を言うので私も釣られて大笑い。
この仕事をしていてよかったなと思うのは、こういうアメリカ人の陽気さに出会うときだ。
むろん、そうじゃない人だっているんだけれど、
目が合っただけで、にっこりと笑ってくれる人がどんなに多いか。
ものごとを、ユーモアを交えて伝えて笑わせたい人がどんなに多いか。



きんちゃく型の皮のバッグから財布を出すのに苦労していたオバサンが、
バッグに手を突っ込みながら

「空港で、これと同じバッグを持った人にバッタリ会ったのよ。で、顔を見合わせるなり、
『イライラくるわ、これ!!』
って同時にバッグを指さしたわよ。
まったく欲しいものが出てきやしない!」

イライラをユーモアにして、人を笑わせてしまう。


買うものを、これは息子でしょ、これは孫でしょ、と言いながらカウンターに並べていたオバサン。
最後に小さなマグネットを1個出して、「で、これがダニー(仮名)」と言う。
「ダニーは友達?」と聞くと、
「近所に住むジイサンよ。留守の間に犬を見てもらってんの。
1日に3回は見に行ってる、って電話では言うんだけど、とんでもない大嘘なのよ。
セキュリティカメラをここからチェックできるのも知らないでさ!」
そう言いながらも、ほんとはそれほど怒ってなくてあったかい感じがする。



こう言ったら、相手がどう思うかといったことを考えがちな私は彼らの陽気さに救われて、
だいぶあっけらかんになれてきたと思う。
それでも、日本に行ったときにはまた、元の自分に戻ってしまいがち。
これはその土地が持つ、パワーの種類の違いなんだろうかなあ。