太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

言わぬが花か

2019-03-04 16:59:29 | 日記
言わなきゃよかった、と思うことより、

言えばよかった、と思うことのほうが断然に多い。

頭の回転の鈍さもあるし、小心者だということもあろう。

だいたいにおいて、ああいえばよかったと、あとになってぐずぐずと引きずる。

できることなら時を巻きもどして、冴え冴えの一言をばっさりと言ってやりたいと地団駄を踏む。

どれもたいしたことじゃない。

ちょっと前のことでいえば、2年前に日本に行った時、秋だというのに暑かった。

とても長袖などを着る気になれず、タンクトップで歩いていたら、周囲の人の目が痛い。

見れば、どの人もちゃんとした秋の服装をしている。

前から歩いてきた若い女性が、私とすれ違いざまに

「寒そッッッ!」

と捨て台詞のように言った。

そのことを隣にいた夫に言うと、

「暑そッッ!!って言ってあげればよかったじゃん」

と言った。

そうだ、そう言えばよかった。

言われっぱなしでいた自分が愚かしく、走って戻って女の子をつかまえて言いたくてじりじりした。


先日、職場でのこと。

お客の一人が、クッキーを指差して言った。

「このクッキー、どこで作ってるの」

「オアフ島ですけど?」

「いつ作ったの」

「3日前に入荷したので先週作られたものですよ」

「でも賞味期限が明日だから、半額だっていいと思うけど」

そんなはずはないと思ったけれど、

クレジットカードの機械の故障で他のお客を待たせていた私は、そのクッキーを買うつもりでもないその人に

深くつきあっている時間もなく、適当に流してその場を去ったのだったが、

用事を済ませてから戻ってみると、賞味期限は 来月の明日、つまり1ヶ月先だった。

そのお客は、月を見ないで日にちだけを見て、明日と勘違いしていた。

あのとき、もうちょっと冷静になって、月日を確認すればよかった。

そして、買いもしないのにねちねちと難癖だけつける人に、

「1ヶ月ありますけど?」

ときっぱりと言ってやればよかった。

あたりを見回したが、もうその人はおらず。



言えばよかったと思うことばかりだ、と夫に言うと

言わなきゃよかったと思うことばかりよりもずっといいかもよ、と言う。

それはそうかもしれないが、性格がさっぱりしていないので、思い出しては怒っているのも疲れる。

頭の回転を速くする薬はないものか。












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2019-03-03 19:32:47 | ハワイの自然
今日はワークショップがあった。

今回、初めて私が教える立場のワークショップだ。

コラージュを始めて6年あまり。

メンターのスーザンが他界して1年。私が誰かに教えるときが来るとは思いもしなかった。

マイクのおかげで、絵を売りはじめ、

ヴィッキーのおかげで、オアフ島でもっともちゃんとした老舗ギャラリーで売ることができるようになり、

職場のオーナーのおかげで、職場で売ることができ、

ギャラリーのラティーシャのおかげで、絵を売るための小道具をそろえることができ、

シュートメが見つけてきてくれたコリンのおかげで、キャンバスプリントができるようになり、

アート仲間のおかげで、ワークショップを開くことができる。

人が、鎖のように繋がって、私を次の場所へ連れていってくれる。

思えば、私はいつだって人に恵まれてきた。

けして「良い関係」とはいえなかった人でも、その人がいたから今の私がある。

そんなことを思いながらワークショップに出かける朝、車を出したら空にみごとな虹。





家の前から。

左のほうがダブルになっているのがわかるかな。

虹はよく見るけれど、こんなに濃い虹は久しぶりに見た。





ワークショップには、インディアナ州から遊びに来ている、夫の叔母も参加した。

ポットラック(持ち寄り)のランチには、スーザンの旦那さんが飛び入り参加した。

「素敵な仲間がいてよかったわね。ここでも日本人はアナタだけだけど」

帰り際、叔母が言った。

叔母は前日、私の職場に立ち寄ったのだ。

日本人が多いハワイで、私が縁があるところには日本人はいない。

いても、なぜか縁は続かない。

それもしかたがないことだ、と割り切っている。




立ち寄ったスーパーマーケットの駐車場から。

虹はまだまだ濃く、長くその腕を伸ばして、海に届かんとしていた。





















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日本語の国に生まれたしあわせ

2019-03-01 08:29:06 | 英語とか日本語の話
かんぬき、という漢字を知っている人はどのぐらいいるだろう。

かんぬきは、昔の日本のお城の門を閉じたあと、真横に渡して開かないようにする角材のこと。

時代ものの本を読んでいて、初めてかんぬきの漢字を知った。






その、あまりのわかりやすさに感動すらする。

門に、横に渡した角材、そのまんま。



漢字は、象形文字であるとともに、漢字そのものがもつエネルギーがあるのだという。

私はそれを知ったときに、夫を使って試してみたことがあった。

漢字を書いた紙を何枚か見せて、その文字からどんなイメージが浮かぶか聞いてみた。

結果、不思議なことに、その漢字がもつ意味の雰囲気の、良い感じ、悪い感じは完璧にわかる。

たとえば、

夫の感想は、嫌な感じ、おさえつけられるような感じ。

「罪」に関しては、「牢屋?」と言った。

確かに牢屋に見えるかも。

たとえば、

なんとなく、きれいだと言った。

「喜」は、箱を明けたらわくわくしたものが飛び出してきた感じ。



まだまだ私の知らない漢字がたくさんあって、多くの漢字を知らないまま殆どの人は死ぬのだというと

英語圏の人は驚く。

読めるけれど書けない漢字も年々増えて、私が読めて書ける漢字は、いったいどれほどの数なのだろう。

知らない言葉がまだまだあるという希望。

人生を折り返しても、かんぬきのように、知らなかった漢字を知る喜び。

25文字のアルファベットだけですべてが事足りる英語圏の人にはわからんだろうなあ。



夫の叔母は海洋学者で、この夏、3ヶ月ほど日本の船に乗って仕事をする。

以前、私が子供に日本語を教えていたときに使った、手作りの教材を叔母に貸し、

それ以外にもネットを使って毎日日本語の勉強している。

助詞の「てにをは」が難しいのは英語と同じ。

オノマトペ(ザーザー、といった擬態語)にも苦戦している。

英語には必ず「YOU」とか「THEY」が入るけど、日本語にはほとんどいらない、というのも不思議。

そして昨日会った時、夫が、

「相手によって話し方を変えるんだよ」

と言った。

「目上の人に、ってことでしょう?2種類あるわけね」

そこで私が

「相手を立てて丁寧に言う言い方と、自分を下げて相手を上げる言い方があって

その両方を混ぜて使うんだよ。上司と友達はむろん、家族と同僚でも微妙に使い分けるんだよ」

「え・・・・・・」

「そこまで覚えなくたっていいけどね。無理だし」

「自分を下げるとか、相手を上げるとか、どんなふうに?」

「たとえば、行く、は自分を下げると 参る・伺う になるし、相手を上げると いらっしゃる になって

食べる、は自分を下げると いただく になって、相手を上げるなら 召し上がる になるんだよ」

叔母はそのままテーブルに突っ伏した。



改めて、日本語って複雑で難しい言語だと思う。

そんな難しい言語を自由自在に使える私って、そうとうすごい。

日本を離れて暮らして気づくことのうち、99%は日本を誇りに思うことばかりである。
















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