原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

副作用が強い割に効果が低い認知症薬の現実

2018年06月26日 | 医学・医療・介護
 ここのところ本エッセイ集に於いて、高齢者有料介護施設に暮らす我が義母に関するエッセイが激減している事にお気付きだろうか?

 これには、明確な理由がある。
 義母の認知症状と耳の聞こえの悪さに拍車がかかっている結果として、どうやら本人自身が“電話をかける”との行為がとことん重荷になっている様子なのだ。
 これまでならば、施設内で何らかのトラブルが発生したり、自身が不快と感じる出来事が起こるとすぐさま私宛に電話を寄越し、その現状を力の限り訴えたものだが…

 こちらとしては義母相手に電話相談に乗る事とはとてつもなく難儀かつストレスフルな生業であり、正直言うなら、その業から解放されて“命拾い”している現状だ。

 義母には今年5月半ばに施設でのケアマネージャー氏との介護に関する懇談の際に会ったのが最後で、それ以来面会していない。


 介護施設から公式に義母の“認知症状”に関する報告があったのは、既に3,4年前の事だっただろうか。
 実はそれよりずっと以前から、私は義母に関して“認知症状”を疑っていた(と言うよりも確信していた)のだが、まさか義理関係の私の立場から、義母の認知症状に関し、身内相手に大っぴらに指摘出来る訳も無い。
 そんな私はケアマネ氏よりその報告を頂いた時に、すぐさま「承知していました!」と応えた。

 さて、義母の施設では認知症診察を外部の担当医師が行い義母本人に告げるようだが、若き医師が診察結果を義母に公表すると同時に、すぐさま「薬がありますか飲みますか?」と投薬を勧めたらしい。
 それに、医者好き・薬好きの義母が喜んで「お願いします!」と応えたとの事だ。

 この話題を私はケアマネ氏より聞き、困惑というよりも仰天させられた。
 認知症状を抱え自身では何らの判断能力も無い義母相手に、医師の立場で投薬の是非を問うとは何事かと!
 その思いをケアマネ氏に伝えたところ、すぐさまケアマネ氏も同意下さった。 義母の施設では、保証人の判断を最優先しているとのことで、即刻それを取り止めるように医師に伝えるとの回答だった。
 ただ、私も迷った。
 何せ義母本人が望んで選択した投薬だ。 “信じる者は救われる”との格言もあるし、もしも義母本人が「せっかく私が医者先生にお願いしたのに、何で他人の貴女がそれを断るのよ!」と反撃に出る事も考えられる。
 更には、既に物凄い数の“劇薬”を処方されそれを数十年来日々飲み続けている義母にとって、たかが一種の認知症薬追加による副作用の詳細など分かったものでもないし……。

 結果としては、私とケアマネ氏の判断が優先され、義母は認知症薬を投与されずに済んでいるのだが。


 さて、話題を変えよう。

 2018.06.24付朝日新聞内に、「認知症薬 仏が保険適用除外」 と題する報道記事があった。

 早速以下に要約して紹介しよう。
 認知症の治療に日本でも使われている4種類の薬が、フランスでは8月から医療保険の適用対象から外されることになった。 副作用の割に効果が高くなく、薬の有用性が不十分と当局が判断した。 日本でそれらの薬が適用対象から外される動きはないが、効果の限界を指摘する声は国内でもあり、論議を呼びそうだ。
 フランス関係筋の話によると、アルツハイマー型認知症の治療薬として、これまで薬剤費の15%保険で支払われていたが、8月から全額自己負担になる。
 東大准教授によると、フランスは薬の有効性に応じて価格や保険で支払われる割合を随時見直している。 今回の薬は有用性が低いとの評価を受け、保険で支払われる割合が引き下げられた。 
 上記4種類の抗認知症薬は病気の症状が進むのを抑えるが、病気自体は食い止められない。 反面、下痢や吐き気、めまいといった副作用がある。
 (国内医学研究機関に於いても同様の研究が成された結果)、国内某認知症医療センター長は、「欧米はケアやリハビリをより重視する。 日本では安易に抗認知症薬が使われている印象」と話す。 
 (以下略すが、以上朝日新聞記事より引用したもの。)


 最後に私論に入ろう。

 まったくもって上記朝日新聞記事に記されている通り、我が国日本の医療・医学とは、いつまで経っても“臨床医”中心の「投薬・検査」に依存した医療が大手を振っている事実に愕然とさせられる。

 その現実を顧みるに、“基礎医学”が果たす役割が今尚不完全である事実を物語っているとも言えよう。
 あるいは、国民に対する「予防医学」観点の教育も未だ手薄なのであろう。

 医学後進国家である我が国に生まれ育った我々は、いつまで経っても「臨床医学」に依存し続けねばならない現状でもある。
 医師が「検査するよ、薬を出すよ」と言えばそれに100%同意する習慣が特に弱者国民に身につき過ぎて、老後に至ってまでもその指導を疑いもしない。

 認知症者などその極限に存在する立場だ。
 「薬出すよ~」と医師から言われ従う我が日本弱者国民達の実態…

 若き頃から主体性を持って生きて来れたならば、ご自身の専門分野にかかわらず、そう易々と医師(臨床医)の指導に従うべくもなかっただろうに…。

 少なくとも我が国家政権がフランス等々医療先進国家に追随するべきだろうが、政府と医療と製薬業界との癒着歴史が長いこの国に於いて、願うべくもない事態なのだろう… 

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