◎ユダヤ人とドイツ人との結婚を禁ず(1935)
電報通信社発行の『独逸大観』(一九三六)を紹介している。本日は、その六回目。
昨日は、同書の第四篇「内政」から、「四、人口政策」を紹介している。本日は、その続きで、「四、人口政策」の紹介としては三回目(最後)。
最初に、「独逸公民法」の紹介がある。先月二八日のブログで、同書第二篇「新国家の誕生」の「三、独逸国の再建(有機的形成)」の「D 独逸公民法」を紹介したが、その内容と、ほとんどカブらない。
独逸公民法
前述の専任官史制復活に関する法律の条項は其後一九三五年九月十五日附独逸〈ドイツ〉公民法に依り廃棄せられた。新法第三条に従へば、独逸国の国権は独逸公民に限り之を行使することを得ると定められた。斯くして猶太〈ユダヤ〉人官吏は公民たるの資格を失ひ、一九三五年十二月三十一日限りを以て退職となつた。勿論本法に於ても前官史法に於けると同様、出征猶太人には例外を許して居る。独逸国は之等の官吏に停年迄全額の俸給を給付することをその義務と解して居る。停年後は勿論法定の恩給を受ける。之以外の猶太人官吏はその官等、服務年限に従ひ他の官吏同様の恩給を受ける。
既に独逸国籍を有する猶太人は新法に依り其国籍を損ずると云ふことはない。唯国籍のあることが従来の様に政治的権利を亨有せしむることがなくなつたに過ぎない。独逸公民法は独逸国籍を有する猶太人の政治上の地位を定めたものであるが、次に掲げる法律は猶太人問題の生物学的の人種的方面を取扱つてゐる。之に依つても独逸の人種問題は猶太人問題に外ならぬことが判明する。
独逸人の血統と名誉とを保護する為の
一九三五年五月十五日附法律
この法律の本文は、次の通りである。
独逸人ノ血統ノ純潔性ハ、独逸国民ノ存続上ノ前提的条件タルコトヲ徹底的ニ認識シ、且独逸国ヲ、永劫ニ安泰ニセントノ不撓不屈ノ意図ニ感激シテ、ライヒスタークハ、満場一致ヲ以テ、次ノ法律ヲ議決シ茲ニコレヲ公布ス。
(註 この法律が、如何に重視せられてゐるかは、かくの如く前言が附せられてゐることによつて知ることが出来る。)
第一条 猶太人ト独逸人又ハ類同ノ血統ニ属スル独逸市民トノ結婚ヲ禁ズ。コノ禁止ニ反シテナサレタル結婚ハ無効トス。本法ヲ回避スル目的ヲ以テ外国ニ於テナサレタル場合モ亦同ジ。
無効確認ノ訴〈うったえ〉ハ、検事ノミコレヲ提起スルコトヲ得。
第二条 猶太人ト独逸人又ハ類同ノ血統ニ属スル独逸市民トノ結婚外ノ交渉ヲ禁ズ。
第三条 猶太人ハ、独逸人又ハ類同ノ血統ニ属スル四十五歳以下ノ女子独逸市民ヲ家政上ノ目的ヲ以テ使傭スルコトヲ得ズ。
第四条 猶太人ハ独逸国旗又ハ国民旗(鈎十字旗)ヲ掲揚シ、国色(黒白赤ノ三色)ヲ現示スルコトヲ得ズ。但シ猶太人ハ猶太人ノ国色ヲ現示スルコトヲ得。コノ権利ノ行使ハ国家ニヨリ保護セラルヽモノナリ。
(第五条と第六条とは、罰則と施行上の規定とである。)
第七条 本法ハ公布ノ翌日(一九三五年九月十七日)ヨリ施行ス。但シ第三条ニ限リ一九三六年一月一日ヨリ施行ス。
如何なる者を猶太人と看倣す〈ミナス〉か、及独逸人と独逸混血児との間には、如何なる程度に於て交渉が許されるかといふこと、並に混血児間の結婚によりて生じたる卑族は如何に看倣さるべきかに関しては詳細に亘つた規定が命令の形式で発布されたのである。
これ等の法律に依つて、国民社会主義国家は、猶太人からの政治的並に生物学的の離隔を完成した。その際に国家は、かうした離隔を基礎としてのみ、初めて主民族と客民族との、即ち独逸民族と猶太民族との共存共栄が望まれるといふ事を出発点としてゐたのである。これ等の法律の規定する処は如何にも峻厳である。しかし此等の規定は重大にして微妙なる問題を明晰に示し且つ根本的に解決したものである故に、却て〈カエッテ〉恰も〈アタカモ〉紫電一閃大気を浄めると同じ様な効果をあらはし、対立を本質的に又一般的に緩和鎮静したのである。
或種の職業、たとへば官職に就くといふ様な事は、猶太人に対しては禁止されてゐるが、他の領域に於ては、彼等は他の凡て〈スベテ〉の市民と同様に、各自の生業に従事する事が出来るのである。苟も国籍を有する猶太人は、誰一人として独逸国より退去を命ぜられる様な事はない。猶太人は一民族として承認せられ、その国色は法律上特別に公認せられたる保護を受けるのである。
「独逸人の血統と名誉とを保護する為の一九三五年五月十五日附法律」の第四条は、ユダヤ人は、ドイツ国旗、ドイツ国民旗を掲揚できないと定めている。同じ日に交付された「国旗法」によって、いわゆる鈎十字旗がドイツ国旗となった。「国色(黒白赤ノ三色)」とは、それ以前のドイツ国旗の配色を指している。
第四条でいう「猶太人ノ国色」というのは、たぶん「青白の二色」を指すのであろう。
明日は、話題を変える。