礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

昭和天皇、米国大使館にマッカーサー元帥を訪ねる

2020-07-10 02:31:28 | コラムと名言

◎昭和天皇、米国大使館にマッカーサー元帥を訪ねる

 朝日新聞社編『終戦記録』(朝日新聞社、一九四五年一一月)から、有竹修二の「新日本への発足」という文章を紹介している。本日は、その六回目で、「マツカーサー司令部を迎へて」の節の後半を紹介する。

 以上は、米国の日本管理案の抜粋である。この全文によつて、連合軍の日本管理方式は、明瞭となつた。その諸項中「封建的官憲主義的傾向を抑止する方向にある政府は許可され支持を受ける」といふ一項は連合国側が希望する国家統治方式を明快に示すものであり、平和国家としでの今後の日本の進むべき針路を決定するものである。
 而して民主主義的の方向に向つて、国民が政治形体の変更を企図し、武力を使はんとする場合、又政府自らが、 この方向に進まんため、反対人物に対して武力を行使せんとする場合が生じたとき、最萵司令官は、特定の場合のほかには、それに干渉しない、といふのである。管理案全文中、これくらゐの大きな意思表示はない。要するに民主主義政治体系実現に向ふ傾向に対しては、十分賛意を表し、それが武力行使を伴ふ場合と雖も〈イエドモ〉決して邪魔だてしないといふのである。
 この管理方式に従つて、マツカーサー司令部は、諸施策を次から次へと進めてゐる。言論政策についても管理案中、根本方針が明示されてゐるが、さらにこの方針に則り〈ノットリ〉新聞記事その他報道取扱に関する具体的指示を行つた。然るところ、この方針を日本政府、新聞、放送が実行に移した態度について、連合軍最高司令部は、不満足の意向を表明し、同盟通信社をはじめ一、二新聞に対して、処分を行つた。その結果、マツカーサー最高司令部から、連合軍管理下にある日本諸新聞の記事編輯方針を規制する新聞紙法ともいふべき指令が発せられるにいたつた。また業務の一部停止を見た同盟通信社は、つひに解散の挙に出ることゝなつた。最高司令部の具体的施策としては、さらに、日本の外地銀行の閉鎖命令が発せられた。すなはち、連合軍最高司令官本部は、終戦連絡中央事務所を通じ、日本政府に対し「植民地銀行、外国銀行及び特別戦時機関の閉鎖」に関する覚書を交付した。
 これによつて、鮮銀〔朝鮮銀行〕、台銀〔台湾銀行〕、満鉄〔南満洲鉄道〕等二十有余の外地、占領地域にある諸機関の閉鎖が命ぜられ、その役員罷免の命令が発せられた。
 なほ、連合軍最高司令官は、日本政府に対して一定条件のもとに、軍用資材を利用して繊維、金属、皮革、貨物自動車、ゴム製品その他の生産を継続することを許可した。
 要するにマツカーサー元帥の態度は極めて冷静であるが合理的で粛々として処実〔ママ〕の方針を進めてゆくかの如くである。畏くも天皇陛下は〔九月〕二十七日、米国大使館に、マツカーサー元帥を訪問遊ばされた。また二十五日にはニユーヨーク・タイムス紙東京特派員フランク・ルイス・クルツクホーン氏に拝謁仰せつけられ、予め提出した質問書に対して御返事を賜つた。【以下、次回】

 最後の段落にある「処実」は、原文のまま(原文では「處實」)。あるいは、「処置」の誤植か。

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