◎われわれは何ゆえに、如何にして敗れたか
朝日新聞社編『終戦記録』(朝日新聞社、一九四五年一一月)から、有竹修二の「新日本への発足」という文章を紹介している。本日は、その三回目。
平 和 国 家 建 設 へ
東久邇宮内閣は、ポツダム宣言諸条件の実行とともに、そのことが規定するところの向後の日本帝国の新政治体制を確立すべき大任務を負ふものである。ポツダム宣言は、日本帝国から陸海軍備を抜き去ることを求め、日本本土として本州、九州、四国、北海道のほか連合国が特に許すところの小島嶼のみを認めんとするものである。日本は、明治初年の領士に還り、しかも一片の軍備なき国として立たねばならぬのである。日本は、かゝる国として、 如何に立国すべきか、如何なる体制をもつて国歩〈コクホ〉を進むべきや、われわれは、茲に〈ココニ〉八月十五日をもつて肇国〈チョウコク〉の業をおこすこととなつたのである。
国民が、この大業にあたる前に、まづ何をなすべきか、敗戦の事実をしつかりと体認すること、これである。第八十八臨時議会は、この目的のために召集されたのである。われわれは、何故〈ナニユエ〉に、如何にして敗れたか、まづ、それを知らねばならぬ。
九月四日開院式に賜はりたる勅語に
信義ヲ世界ニ布キ〈しき〉平和国家ヲ確立シテ人類ノ文化ニ寄与セムコトヲ翼ヒ〈こいねがい〉日夜軫念〈しんねん〉措カス〈おかず〉
と極めて明確に国民の嚮ふ〈ムカウ〉べきところを明示あらせられ、さらに
国務大臣ニ命シテ国家内外ノ情勢ト非常措置ノ経路トヲ説明セシム
と宣ひ〈ノタマイ〉、御勅語通り、戦局一変、和平に到る経過の全曲〔ママ〕が細大洩らさず、公表された。
陛下御親ら〈オンミズカラ〉「平和国家」なる語をもつて、日本国民の向後の志向を明示遊ばされた。かくしてわれらがゆくべき大道はひらかれた。われわれは、今から整々として、その大道をゆかんとするのである。われわれは、新しい歴史の発程につかうとするのである。それに先だつて、過去への深き反省が求められる。まづ戦争を静かにふり返つて見ことを求められるのである。【以下、次回】