「集団自決」訴訟の本人尋問は、民事訴訟の被告になった
ノーベル賞作家が法廷に立つことで、注目を集めた。
ただ、戦隊長命令の有無をめぐる訴訟で、むしろ意味合いが大きいのは、
戦後手だてを尽くして自決命令を否定してきた元戦隊長が、
自らの言葉で何を語るかだった。
原告側は、米軍の上陸を控え、村の幹部らが梅澤裕氏を訪ねて来た
一場面に絞り、梅澤氏による命令を全面否定。
皇民化教育を背景に、日本軍が島に駐屯した経緯をたどり、
軍や戦隊長による強制・命令の実態をとらえる被告側との擦れ違いは
鮮明になった。
梅澤氏の主張は従来通りだったが、部隊の最高指揮官としての
責任を否定した証言は印象深い。
主尋問で「責任はない」と明言し、反対尋問や会見でも
「一番の責任は米軍にある」「命令を出したのは軍ではなく県」
とするなど、多くの犠牲者が出た「集団自決」という事実からの
“逃避”をうかがわせた。
七月にあった宮城晴美氏の証人尋問で、原告代理人は
「梅澤さんは責任がないとはひと言も言ってない」と明言していただけに、
梅澤氏の発言は、弁護団とのずれをのぞかせる場面ともなった。
同訴訟の提起は二〇〇五年八月だが、原告側が名誉棄損の主たる対象にしている
「沖縄ノート」を「去年になって初めて読んだ」と話す梅澤氏。
赤松嘉次・渡嘉敷島元戦隊長の弟も、訴訟を起こしたきっかけを、
嘉次氏の陸軍士官学校同期生から誘われたと述べた。
軍の命令と戦隊長による命令を明確に区別し、
原告側が元戦隊長ら個人の名誉回復を強調する一方、
岩波側の支援者は「狙いは日本軍そのものの名誉回復」とみる。
本人尋問では、訴訟の提起が少なくとも原告本人の発意ではなかったことを
事実上、裏付けた。
同訴訟は、係争中でも高校の歴史教科書検定の主たる根拠となった。
判決は将来の検定に影響を与えるのに十分な可能性をはらんでいる。
沖縄タイムス社会部・粟国雄一郎記者
ノーベル賞作家が法廷に立つことで、注目を集めた。
ただ、戦隊長命令の有無をめぐる訴訟で、むしろ意味合いが大きいのは、
戦後手だてを尽くして自決命令を否定してきた元戦隊長が、
自らの言葉で何を語るかだった。
原告側は、米軍の上陸を控え、村の幹部らが梅澤裕氏を訪ねて来た
一場面に絞り、梅澤氏による命令を全面否定。
皇民化教育を背景に、日本軍が島に駐屯した経緯をたどり、
軍や戦隊長による強制・命令の実態をとらえる被告側との擦れ違いは
鮮明になった。
梅澤氏の主張は従来通りだったが、部隊の最高指揮官としての
責任を否定した証言は印象深い。
主尋問で「責任はない」と明言し、反対尋問や会見でも
「一番の責任は米軍にある」「命令を出したのは軍ではなく県」
とするなど、多くの犠牲者が出た「集団自決」という事実からの
“逃避”をうかがわせた。
七月にあった宮城晴美氏の証人尋問で、原告代理人は
「梅澤さんは責任がないとはひと言も言ってない」と明言していただけに、
梅澤氏の発言は、弁護団とのずれをのぞかせる場面ともなった。
同訴訟の提起は二〇〇五年八月だが、原告側が名誉棄損の主たる対象にしている
「沖縄ノート」を「去年になって初めて読んだ」と話す梅澤氏。
赤松嘉次・渡嘉敷島元戦隊長の弟も、訴訟を起こしたきっかけを、
嘉次氏の陸軍士官学校同期生から誘われたと述べた。
軍の命令と戦隊長による命令を明確に区別し、
原告側が元戦隊長ら個人の名誉回復を強調する一方、
岩波側の支援者は「狙いは日本軍そのものの名誉回復」とみる。
本人尋問では、訴訟の提起が少なくとも原告本人の発意ではなかったことを
事実上、裏付けた。
同訴訟は、係争中でも高校の歴史教科書検定の主たる根拠となった。
判決は将来の検定に影響を与えるのに十分な可能性をはらんでいる。
沖縄タイムス社会部・粟国雄一郎記者