奇妙な絵 K・Kさんの作品
四歳の孫娘が女の子の絵を描いている。隣には老人ホームから外出許可をもらった卒寿の母が座って見ていた。孫娘は髪の長い女の子に、ピンクのリボンをつけた。横にはウサギを、まわりには木と花を添えた。「できた!」顔を上げた。
目を細めて見ていた母が話し始めた。
「私の子どものころは戦争中で、白い紙が無いから新聞の白い所を切ってね。糊もないし、ご飯粒で貼って紙を作ったんだよ」と続く。「絵といえば飛行機だったけど。カタカナのエを書くと飛行機に見えるよ。こうやってね」とエの字を三つピラミッドみたいに重ねた。
孫娘の描いた女の子の絵の上の所に、母はエの字で黒い飛行機を幾つも書いてしまった。奇妙な絵になった。でも、よく考えると恐ろしい絵にも見える。当たり前に平和な女の子の上を、編隊を組んだ飛行機とは……。
さらに、「B二九が頭の上をゴーと嫌な音をたてて行ってね。名古屋空襲は怖かったよ」。と言って、ぶるっと身体を震わせた。母の心の奥深く刻みつけられているのだろう。
孫娘は不思議そうに見ていた。「これ、何に見えるかな?」、「わからない」首をかしげる。孫娘の描いた絵のような平和な毎日が続きますようにと願う。
四歳の孫娘が女の子の絵を描いている。隣には老人ホームから外出許可をもらった卒寿の母が座って見ていた。孫娘は髪の長い女の子に、ピンクのリボンをつけた。横にはウサギを、まわりには木と花を添えた。「できた!」顔を上げた。
目を細めて見ていた母が話し始めた。
「私の子どものころは戦争中で、白い紙が無いから新聞の白い所を切ってね。糊もないし、ご飯粒で貼って紙を作ったんだよ」と続く。「絵といえば飛行機だったけど。カタカナのエを書くと飛行機に見えるよ。こうやってね」とエの字を三つピラミッドみたいに重ねた。
孫娘の描いた女の子の絵の上の所に、母はエの字で黒い飛行機を幾つも書いてしまった。奇妙な絵になった。でも、よく考えると恐ろしい絵にも見える。当たり前に平和な女の子の上を、編隊を組んだ飛行機とは……。
さらに、「B二九が頭の上をゴーと嫌な音をたてて行ってね。名古屋空襲は怖かったよ」。と言って、ぶるっと身体を震わせた。母の心の奥深く刻みつけられているのだろう。
孫娘は不思議そうに見ていた。「これ、何に見えるかな?」、「わからない」首をかしげる。孫娘の描いた絵のような平和な毎日が続きますようにと願う。