正社員の一部手当て 契約社員にも支給を 浜松の会社に高裁命令(16.7.26 朝日新聞)
同じ労働で正社員にだけ支給される手当があるのは不当だとして、東証1部上場の物流会社「ハマキョウレックス」(静岡県浜松市)の契約社員の男性(54)が、給食手当などの支払いを求めた訴訟の控訴審判決が26日、大阪高裁であった。池田光宏裁判長は一部手当を契約社員に支給しないのは違法として同社に77万円の支払を命じた。
支給手当について、高裁で違法判決が出るのは初めて。代理人弁護士は「同様の訴訟に与える影響は大きい」と評価した。
2013年4月施行の労働計約法20条は、無期雇用の正社員らと有期契約で働く契約社員らとの不合理な差別を禁じている。判決は、正社員は広域の転勤や組織の中核を担う可能性があると指摘。各手当について転勤の有無など立場にかかわるかどうかに基き、判断すべきだと指摘した。
そのうえで、給食と無事故、通勤、作業の四つの手当は正社員の職務内容などとは無関係で、契約社員に支給しないのは違法と判断し、会社の責任を認めた。
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最初にこの記事読んで疑問に思ったのは、浜松の会社の事案なのに浜松とは管轄外の大阪高裁が控訴審判決を下したことです。インターネットで検索してみましたら、時事通信の報道では提訴した契約社員の人は滋賀県の彦根支社に勤めていたので、大津地裁に提訴しましたが敗訴したので、大阪高裁に控訴したのだと分かりました。(読者に疑問を持たせるような原稿は良くありませんね)
安倍内閣は一億総活躍社会を目指すと宣言しました。少子高齢化に歯止めをかけ、人口1億人を維持して、家庭・職場・地域でだれもでも活躍できる社会を作り出すというのです。
三本の矢の成果として平成28年1月の雇用統計では、役員を除く雇用者5332万人のうち、正規の従業員が前年同期に比べ60万人増加し3325万人になった。完全失業者も213万人で前年同期に比べ15万人減ったと“アベノミクスの成果”を誇りました。
しかし総務省統計局の雇用統計を見てみますと、非正規の職員・従業員は28万人増えて2007万人と全従業員の37.6%に及んでいます。非正規の従業員うち男性では「正規の職員・従業員の仕事がないから(仕方なく非正規の従業員になった)」が前年同期に比べ2万人増えています。アベノミクスによる好調な雇用情勢の実態は“仕方なく低賃金の非正規従業員になった人”が数字上で作り出したものです。
日本の多くの企業では、問題になった企業と同様、正規の従業員と同じ仕事をしていても手当(賃金)に差がつく非正規従業員を雇っていますが、政府はこのような実態には目をつむり、見かけの数字上の“作られた労働事情の安定”に目をつむってはなりません。
「差があることの不合理」を戒めたこの判決が、代理人弁護士が言うように「全国の裁判」に広がって欲しいと思います。
大西 五郎