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選挙向け世論操作   文科系

2017年10月03日 12時12分50秒 | 国内政治・経済・社会問題
 昨日今日の新聞に、酷い世論操作が続いている。日銀発の「景況感 10年ぶり高水準」という、企業短期経済観測調査による業況判断指数の発表である。日銀が選挙を意識してやっている与党援護射撃見え見えで、実にみっともない世論操作と言うべきだ。
 これと国連関係が発表する以下のGDP数字などとを比べれば、後者の方が客観的で、遙かに長期間続いた、大変重いもの。業況判断は単に主観的な、短期的「感じ」にすぎない数字なのである。そんな物を何故後生大事に「10年ぶり」などと・・・。

 世界銀行とかIMFとかが発表する日本の名目GDPは、1997年537兆円を最高峰として、1998年534兆円以降は2013年まで500兆円をすら超えたことがない。1997年の峰を越えたのは2016年になってやっとのことである。そして、その間に他国はいちおう伸びているから、日本の一人当たりGDPの国別順位は下降一直線である。一人当たりの名目GDPは世界22位、購買力平価換算だと30位程まで落ちてしまった。97,8年は世界3位とか4位とか言われていたから、なんたる落ち込みようかと、ここでいつも指摘してきた通りである。これこそが日本の長期に渉る貧困化の土台となる数字なのだ。

 不安定労働者ばかりが増えたこと、「家事手伝い」という独身女性など若者の潜在失業者大群、ブラック企業の続出、これらが関係する酷い少子化現象などなどは、このGDP激減の結果とも現れとも言えるものだ。しかも、日銀やGPIFの金をどんどん注ぎ込んで株高を人為的に作ってもなんの歯止めにもなっていないと、これは安倍自身が認め、選挙に向けて大いに気にしていることであるらしい。

 ともあれ日銀は、こんな世論操作に血道を上げる暇があったら、株高操作の出口戦略でも懸命に模索することだ。他の先進国ではもう、量的緩和政策は終わりかけているぞ! ぽさっとしていると、出口が無くなってしまう。
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金融世界支配の歴史、現状 ②   文科系

2017年10月03日 11時14分49秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例

『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。1ドル25バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、3か月後に25バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備250億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」』
 タイのこの問題に詳しい専門家による解説をご紹介しよう。なんせ通貨危機というのは、「1970年から2007年まで世界208カ国で起こり」(前掲書 伊藤正直「金融危機は再びやってくる」)、中小国家などからは「通貨戦争」とも呼ばれて恐れられてきたもの。中でもこのタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として重要なものだ。毛利良一著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)から抜粋する。
『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。(中略) 投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。(中略) 1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる』
分かりやすく説明するとこういうことだ。
 一ドルがタイ通貨25バーツの時点で、三か月後に1ドル25バーツでドルを大量に買う先物予約をしておく。その上で、バーツを一挙に、どんどん売り始める。そこには、予め同業者などから大量に借りる契約がしてあったバーツなども大量に含まれている。自分が所有していない債券、商品などを売る行為を空売りと呼ぶが、これらの結果、三か月後1ドル30バーツになって起こることを、例示してみよう。1億ドルで30億と安くなったバーツを普通に買ってから、先述の先物予約を行使してこのバーツでドルを買えば1億2千万ドルに換えられる。また、普通は不安になるこんな「大商いへの確信」も、世界大金融には比較的容易なものだ。動かせるバーツとタイ政府の「防御体制(金額)」とを比較でき、そこから勝利の目処となる投入金額に目算も立つからだ。
 上記毛利良一氏はこう続けている。
『投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、・・・・機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている。』



 第2章 金融グローバリゼーションの破綻

 第1節 金融が世界を乗っ取った


①その一般企業支配
 新自由主義グローバリゼーションが各国通貨から空売り搾取を行ったやり方を、タイ通貨危機からアジア通貨危機を例にとって、前節で見た。世界的な金融競争こそ経済発展の原動力とする米英など先進国の新たな新自由主義経済の主らとは、投資銀行、銀行、ファンドなどである。彼らによる金融中心経済のやり方を眺めておく。
まず、株の売買については、余剰資産売却・吸い上げ型と、リストラによる収益型とがある。前者は、土地など大きな「余剰」資産を所有する会社の筆頭株主になり、その資産を売り払って株価を大幅に吊り上げてこれを売り抜く。もう一つはやや長期に渡って筆頭株主になり、リストラ・合理化に励んで株価をつり上げて売り抜く。
 こんなやり方で米企業を金融が買い占めていった経過を、ある本から要約してみよう。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書 2012年6月第5版)
 機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えて、1960年アメリカで12%だったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。次いで、企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合が急増する。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。

②デリバティブ、金融派生商品
 次に、種々の金融派生商品の発明、売買というやり方がある。デリバティブという近ごろよく聞く言葉がこれだ。その大元の原理に触れておきたい。
 消費者ローンでも住宅ローンでも、借用証書がある。これは、借りた方が貸した方に出す証明書。これを貸し手が債券として出すのが社債や国債。一定利子が付くのは同じだが、こちらはお金同様の意味を持ち、売買も可能なもの。
 そしてさて、この社債などと同じ考え方で、種々のローンの貸し主が借用証書(債権)を証券化したものが金融派生商品の元である。焦げ付きなどの危険が高い借金から出来た高リスク証券とか、低リスク証券でも元のローン返済が急に怪しげになったりしたら、利子を高くしなければ売れない。そこで最大問題は、このこと。高リスク商品は当然売りにくいが、首尾良く売れるようにできれば、凄い儲けになる。全米抜群の優秀な頭脳を超高級で雇って、高リスク商品を売るために「高リスク高リターン商品」をあれこれと考え出していくことになった。

③サブプライムローン組込証券
 この証券化商品というのはまた、色々に分割して組み合わせることができる。これは、1銘柄の株を売るのではなく、投資信託を売るようなものと言えばよいだろう。とにかく、様々な負債を組み合わせるのだが、そこに高リスク債券を巧みに切り分けてもぐり込ませていく。貯金ゼロの低所得者に売りつけた住宅ローンからできたサブプライム・ローンの債券でも、これに安全な債券を組み合わせれば信用が「保証された」証券ができあがるという理屈だ。「高リスク貸し金を低リスクと混ぜて貸し手を増やし、今まではお金が貸せなかった人にもマイホーム、マイカーを持っていただけるようにした夢の商品!」なのである。リーマンショックの前のサブプライム・バブル期には、これが爆発的に売れた。ネズミ講同様大いに売れている間は自転車操業的資金繰りに困るどころか、大いに儲けも上がったのである。「偽の信用がどんどん膨らんでいった」のだが、その急成長中に偽だとは誰も振る舞っていないから問題なのだ。


(続く  なお、全体の目次は以下の通りです)

第1章  金融グローバリゼーションの生成と発展
第1節 その生成
第2節 民間資金の世界席巻と通貨危機
第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例

第2章 金融グローバリぜーションの破綻
第1節 金融が世界を乗っ取った
①その一般企業支配
②デリバティブ、金融派生商品
③サブプライムローン組込証券
④CDS
⑤金融は、国家さえ乗っ取る
第2節 「100年に1度の経済危機」
第3節 破綻の構造

第3章 金融グローバリゼーションの改革
第1節 国際機関などの対応
第2節 各国などの対応や議論
第3節 平和に生きて行ける世界を目指して

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