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一枚の写真              まもる

2008年09月19日 02時42分31秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 気にかかる写真というものがある。
 上に掲げた写真もその一葉である。(タイトルをクリックすると拡大します)

 平和記念館や平和の催しに行くたびに、この写真に出会っている。
 こんな写真を見ると、誰がどんな気持ちで、何を思いながら撮ったかと思うし
 写されている人はその後どんな生き方をしたのかと気がかりになる。

 そんな時、俳句仲間のご主人Sさんが「雑記通信」という小冊子に、この写真を撮り、「トランクの中の日本」という写真集にした米国人カメラマン=ジョーオダネルさんの紹介記事を書かれているのを読むことが出来た。
 その一文により私は今まで知りたかった多くのことを知ることが出来た。

 Sさんは苦労の末絶版となっていたこの写真集の出版社を探し、再販された「トランクのなかの日本ー従軍カメラマンの非公式記録」(写真ジョー・オダネル、聞き書きジェニファーオルドリッチ 発行・小学館¥2500円)を探し当てられた。

 そして、この写真に添えられたオダネル氏からの聞き書きを小冊子に紹介しておられる。聞き書きは「焼き場の少年」と題されたこの写真の様子を酷いほど感動的に伝えるものである。

 (写真に添えられた文章)     説明の先頭に「長崎」と記されています。

『焼き場に十歳くらいの少年がやってきた。小さな体はやせ細り、ぼろぼろの服を着てはだしだった。少年の背中には二歳にもならない幼い男の子がくくりつけられていた。その子はまるで眠っているようで見たところ体のどこにも火傷の跡は見当たらない。

 少年は焼き場のふちまで進むとそこで立ち止まる。わき上がる熱風にも動じない。係員は背中の幼児を下ろし、足元の燃えさかる火の上に乗せた。まもなく、脂の焼ける音がジュウと私の耳にも届く。炎は勢いよく燃え上がり、立ちつくす少年の顔を赤く染めた。気落ちしたかのように背が丸くなった少年はまたすぐに背筋を伸ばす。私は彼から目をそらすことができなかった。少年は気を付けの姿勢で、じつと前を見続けた。一度も焼かれる弟に目を落とすことはない。軍人も顔負けの見事な直立不動の姿勢で彼は弟を見送ったのだ。

 私は彼の肩を抱いてやりたかった。しかし声をかけることもできないまま、ただもう一度シャッターを切った。急に彼は回れ右をすると、背筋をぴんと張り、まっすぐ前を見て歩み去った。一度もうしろを振り向かないまま。係員によると、少年の弟は夜の間に死んでしまったのだという。その日の夕方、家にもどってズボンをぬぐと、まるで妖気が立ち登るように、死臭があたりにただよった。今日一日見た人々のことを思うと胸が痛んだ。あの少年はどこへ行き、どうして生きていくのだろうか。

この少年が死んでしまった弟をつれて焼き場にやってきたとき、私は初めて軍隊の影響がこんな幼い子供にまで及んでいることを知った。アメリカの少年はとてもこんなことはできないだろう。直立不動の姿勢で、何の感情も見せず、涙も流さなかった。そばに行ってなぐさめてやりたいと思ったが、それもできなかった。もし私がそうすれば、彼の苦痛と悲しみを必死でこらえている力をくずしてしまうだろう。私はなす術もなく、立ちつくしていた。』

★この文章を紹介くださったSさんは、今ピースあいちのボランティアーをされており、この冊子の中で、館にもこうした写真が数多く展示してあるので、これらの写真に目を背けないでという意味のことを書いてみえました。
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2 コメント

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 (明日香)
2008-09-19 08:16:42
この記事を読み涙が出てしましました。
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とても印象に残る写真 (落石)
2008-09-19 10:35:08
私も、どこかで見たような記憶が
ありました。
先日、NHKがオダネル氏の話を
紹介していました。

彼は自分が原爆症になっていることに愕然として、
この写真を公表する決心をしたとのこと。

アメリカのなかでは、かなり強い批判もあり、
このことが理解できない夫人とは
離婚したとも。

声をかけない。じっと見守る。
それしか出来ないが、
そのことが人間の条件であることが
よく分かります。



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