たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

2008年『フェルメール展』‐フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女」

2020年07月24日 16時12分58秒 | 美術館めぐり
ヨハネス・フェルメール(デルフト1632-1675デルフト)
《ヴァージナルの前に座る若い女》
1670年頃
油彩/カンヴァス、25.2×20㎝
個人蔵

2008年8月2日~12月14日『フェルメール展-光の天才画家とデルフトの巨匠たち』より

「この作品は個人が所有していたためあまり知られず、長らくフェルメール周辺の画家の作品とみられていた。近年の科学的調査により、カンヴァスが《レースを編む女性》と同じで、使用した顔料もほかのフェルメール作品と同じであることが判明した。図柄は《ヴァージナルの前に座る女性》とほぼ同じで、衣装と背景を変えれば本作になる。しかし、黄色いドレスや平坦な顔の描き方は、フェルメールとは思えないほどぎこちなく、真筆を疑問視する研究者もいる。」

(『西洋絵画の巨匠-フェルメール』より)




(会場で購入した公式ガイドブックより)

「この魅力的な小品は、個人コレクションにあるフェルメール最後の作品である。黄色いウールのショール、白いサテンのドレスに身を包み、若い女が7分身でヴァージナルに向かい、青いベルベッドでおおった椅子に座っている。彼女は真珠のネックレスとイヤリングをつけ、アップの髪形に、薄い赤と白のリボンでとめた巻き毛をたらす。1670年頃に流行った髪形である。彼女は、演奏の構えをしつつ、頭をめぐらせて鑑賞者を見て、わずかに微笑む。本作品での音楽主題の扱いは、こうした点において、ロンドンのナショナル・ギャラリーにある2点の絵画に類似する。2作品にはそれぞれヴァージナルの前に立つ女性とヴァージナルの前に座る女性が描かれている。音楽に関する主題は数少ないフェルメールの作品群にしばしば繰り返し登場するが、《合奏》と呼び習わされている作品(ガードナー美術館から盗難され、未だに取り戻されていない)から、独奏の場面を描いた《音楽の稽古》として知られるバッキンガム宮殿の作品や、リュートやギターを演奏する女性単身像に至るまで、あらゆるヴァリエーションが含まれている。一方、本作品はフェルメールが非常に心を込めて構想した小品のうちの1点である。実際に、これはカンヴァスに描かれた最も小さい作品の1つに数えられる。ルーヴル美術館にある《レースを編む女》とほとんどサイズに変わりはない。同作品も、白い飾り気のない石膏壁を背にした全く同じ髪形の女性が一人、描かれている。

 この作品は、有名なベイト・コレクションを経て、1960年以降はブリュッセルのフレデリック・ロラン卿(2002年没)のコレクションに移ったが、その間、何年にもわたり一般にはほとんど知られず、数人の研究者だけしか見ることがなかった。当初は真作と認められていたが、A.B.デ・フリースは、1948年に刊行したフェルメール研究書第2版においてフェルメールの手から外した。彼は後になあって考えを改めたが、二度と本作を真作として発表することはなかった。その結果、古い複製でしかこの作品を知らない多くの鑑定家が本作品を退け、あるいはフェルメールの作品群の片隅に追いやって言及しなくなった。1993年にロラン卿が本作品の新たな研究に着手して初めて、専門知識を持つ研究者たちによって技術・様式の双方から再び綿密に調査されることとなった。

 科学調査が明らかにしたところによると、本作品に用いられた材料と技術は、フェルメール作品として知られている作品の制作方法と寸分違わない。比較的粗めのカンヴァス地は、糸の数や織りが《レースを編む女》に実によく似ているので、2作品の支持体はおそらく同一のカンヴァス布から切り分けられたものであろう。地塗り層の構成もまたフェルメールの個人的な制作法と一致する。検出された顔料-鉛錫黄、緑土、そして分けても高価な天然ウルトラマリン(ラビス・ラズリ)-もフェルメール作品であることを強力に裏付ける。ちなみに天然ウルトラマリンは、ほとんどもっぱらフェルメール作品に用いられているもので、彼の深く、濃い青色のよって来たるところである。支持体であるカンヴァスと地塗り層には、フェルメールが遠近法を構成する際に好んで用いたピンの穴が残る。研究者の間でなお議論が続いている黄色いショールの部分は、画家による描きなおしの跡であるとともに、保存状態をめぐる問題点を提示してもいる。つまり、この部分のつや出し(グレーズ)の層が損傷していたため修復が施されたのか、あるいはこの部分が、一時期、完成されないままに残され、数年後になってフェルメール自身あるいは後に誰か別の者に寄って仕上げられたのか、議論がかわされているのである。しかしながら、結局、技術的調査の結果、本作品がフェルメールによるものであることに疑問の余地は亡くなった。2002-03年には軽い洗浄が行われ、見栄えはずいぶんと良くなった。」


公式ガイドブックの解説、長いのでもうすこし続きます。

《レースを編む女》は2009年『ルーヴル美術館展』で、《ヴァージナルの前に座る女性》は先日の『ロンドン・ナショナルギャラリー展』で会うことができました。

12年の歳月を経てようやく振り返るフェルメール作品とのはじめての出会い、幸せなひとときでした。なんだか苦しむために生まれてきたかのような人生なのかもしれませんが、幸せな時間もたくさんありました。そしてこれらかもあるはず。だから大丈夫・・・。












2018年11月26日;2018年8月『フェルメール光の王国展2018』
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/ad5878646d6d3e712989f2573929c8ea

2018年12月1日;2018年8月『フェルメール光の王国展2018』(2)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/cd1e7bd82d15a15c718c13528bd030e3