(公演プログラムより)
「〈最終答弁〉でせめて爆発させてあげたいフランツの感情
今までに歌ったことのないような曲調の壮大な作品であること。そして自分が演じるフランツ・ヨーゼフは、ウィーンでもっとも人気の高い、国民のために尽くした皇帝であること。そんなイメージをもって『エリザベート』雪組初演に臨みました。演じる以上は、ご本人にもウィーンの片にも失礼があってはならない、手前勝手な解釈でやってはいけないと、出ている本はすべて読み、さまざまな解釈で書かれている中でもこれは外せないというところを押さえていきました。小池先生に「いろいろなひげをつけなくちゃいけないけど、いい?」と聞かれましたが、むしろ、なんでそんあこと聞くんだろうと。もちろん、20代から70代まで、3時間の中で変化していくことは精神的には大変なんですが。〈嵐も怖くない〉と〈夜のボート〉は同じ旋律で歌詞が違いますが、年齢が言ってからだと筋力も衰え、歯も抜けたりっして滑舌も変わってくるだろうなと、違う声質で歌うことを心がけました。さまざまな書物を読んでも決して変わらなかったのは、フランツはとてつもなくエリザベートを愛していたということ、旅先から来る手紙を軍服にいつも忍ばせ、立ち寄る部屋には必ず肖像画が置いてあり、自分はほとんど着たきりすずめで、公費はみんなエリザベートに送ってしまう。どれだけ好きやねんと思いますし、そう考えるとこのお話はちょっと切ないですが、ルドルフを亡くし、エリザベートを亡くし、それでも高齢で亡くなる少し前まで、朝早く起きて仕事をして・・・。フランツの歌は、弦楽器が鳴っていて、勢いでは歌えない、ごまかしの利かないものばかりなんですが、トートと対決する〈最終答弁〉だけは、せめて感情を爆発あせてほしい、爆発させてあげたいという願望をもって歌っていましたね。より心に深く届けられるものを表現できるよう、今回も頑張りたいと思っています。」