高校卒業後、かの京都大学の文学部へ進学。アンドレ・ジッドやレイモン・ラディゲをはじめ「フランス文学が好き」という理由でフランス文学を専攻。卒論はフランスの哲学書をテーマに書いたそう。
「当時は明確な将来の目標を見つけることができず、ただ漠然と“何か海外と関係のある仕事ができたらいいな”と思っていました」
そんな上田さんが、大学卒業後に就職したのはフランス文学とも海外とも全く関係のない製薬会社。
「当時は就職氷河期。ありとあらゆる会社を受けて、たまたま受かったのがその製薬会社だったんです(笑)」
大学を卒業したら会社に入って働くのが当たり前だと思っていた、という上田さん。その“当たり前”をまっとうすべく“お給料がもらえるならばどこでもいい”そんな思いで入った会社だったが、これが彼女の人生を大きく変えるきっかけに。
「会社には2年間勤めたのですが、そこでの社会経験はおおいに役に立っていて。あの時間がなかったら今の私はない、そう言っても過言ではないくらい」と言葉を続ける。
「学んだことも同じならば興味の対象も同じ、大学までは似たような人達に囲まれて生きていたけれど。会社には、年齢も、好きな物も、育ってきた過程も……自分とは異なる人達が沢山いる。
それが凄く勉強になったというか。社会とはどういうものなのか、世間の人々はどういう気持ちで日々暮らしているのか、その2年間が私に教えてくれたんです」
なかでも、上田さんの中に強く残ったのが「生きるのは大変なんだ」という学び。
「相手が年下であっても上司ならば頭を下げなければいけない、理不尽なこともあれば、どんなにやりがいを感じていても異動で他部署に飛ばされることだってある……でも、家族や生活のために会社を辞めるわけにはいかない。
そうやって、何年も仕事を続けている人が沢山いる。これが“生きる”ということなんだ、と。好きなことを仕事にしている人はごくわずか、大多数がそうやって生きていることを改めて実感したんですよね」
今まで知らなかった“人々が抱える思い”にも沢山触れることができた。
「ОLって色々大変なんですよ(笑)。
独身貴族として華やかに生活しているように見える人も、結婚して幸せそうに見える人も、おのおの心に何かを抱えている。深く知ると、それぞれがいろんな意味でスキャンダラスだったりして。それこそ、皆が小説の主人公のように思えるくらい」
会社生活では、日本企業特有の考え方や風習にカルチャーショックを受けることも多かったが「渦中にある現実というよりも、どこか外側から見ている自分がいて。まるで舞台を観るように、自分の葛藤も含めてそれを面白がっていた」と笑う上田さん。
「東京で一人サラリーマンとして働く、この状況がどこか“根なし草”のように思えて。
“このままでいいのか?”という不安は常に感じていました。
毎日デスクに向かい同じ作業を繰り返す、それが私の仕事であり、皆も当たり前にやっていることなんですけど……次第に“自分の存在のよりどころはどこなのか”を考えるようになってしまったんですよね」
仕事とはお金を得るためのものだと割り切ることもできなければ、仕事以外に打ち込めるものもない。
時間を売り渡して得たお金をストレス解消のようなものに使い、またストレスを溜めてお金を使う……そんな毎日の中で膨らんでいく「私は何者なんだろう」「誰なんだろう」という感覚。
「この東京砂漠にこれ以上いたら遭難してしまう!! そんな思いが蓄積したときなんです。
宝塚歌劇団の演出助手の求人を知り願書を出したのは。正直に言ってしまうと“夢を追い求めて”というより“転職がしたい”、後者の思いのほうが当時は強かったんですよ(笑)」
稽古場のドアストッパーのブロックを枕に床で寝たことも。本番前になると過酷を極めた演出助手時代。
しかし「一度も辞めたいと思ったことはなかった」と上田さん。
「生きること、そして、仕事とは大変なものである。それは会社勤め時代に学んでいましたから(笑)。
また、物理的な大変さはあっても、精神面は逆に以前よりラクになったんです。
初日の幕が開けば、皆で作り上げた舞台がお客様に届く。
一次生産者から消費者へ、そのカタチが明確になったというか。歯車の一部になっていたときには見えなかったものが明確に見える。会社時代に抱えていた“私は何をしているんだろう?”そんな不安を感じなくなったのが大きいのかもしれませんね」
会社員経験がなかったらこの仕事の有難みを感じることなく辞めていたかもしれない、と微笑み
「先まで見通せる長い道を眺めるよりも、曲がり角があるサバイバル人生のほうが私には向いているのかもしれません。まあ、これは宝塚という組織に守られているからこそ、言える言葉なのかもしれませんが」
と笑った上田さん。
https://www.wanibookout.com/10578/
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2016年にBOOKOUTというサイトに掲載された上田久美子先生のインタビュー記事。2年間普通のOL生活を送った経験と感性が、早霧せいなさん主演『星逢一夜』、明日海りおさん主演『金色の砂漠』、朝夏まなとさん主演『神々の土地』という当て書きの傑作を生み出し、紅さんゆずるさん主演で『霧深きエルベのほとり』を56年ぶりに再演するという奇跡を生み出したのかと思うと、ウエクミ先生に生きることの大変さを教えてくれた大会社よ、ありがとうございますという気持ちにすらなります。いずれの作品も、ものすごい心のエネルギーが演者に要求される作品で、特に主演のトップスターさんのエネルギーを心身共に凄まじく削いだと思いますが、どうしようもない人間同士の葛藤を描いた舞台は、観客の感性に大いに訴えかけ、心に刻まれることとなりました。
以前にも書いたことあるような気がしますが、十数年前に住んでいた部屋の近くのカイロプラクティックの先生、渋谷でホテルマンだったころ人間関係がつらくってつらくって死ぬことすら考えるほどつらかった、一人息子が大学を卒業して就職すると退職してカイロプラクティックを勉強し借金を背負って開業、一人がいいとアシスタントを置かず、施術中でも電話が鳴れば中断して出ていました。雑居ビルの階段の踊り場でタバコをおいしそうにふかしている姿を今も思い出します。これが生きるということ。
疲労困憊で茫然としている土曜日、このままだと行けなくなってしまったみりおさんの横浜アリーナのチケットが先ほど阪急交通社からヤマトで届きました。お金はともかくわたしの分も楽しんでくれる人に譲りたいのでぴあに託そうかと考えています。前日まで受付とあるので明日ライブビューイングのチケットがとれたら送ろうかと。チケットを諦めるのは初めてのことなのですごくつらいですが仕方ないですよね、これ以上家にいられないし、住民税の請求書きたし、観劇にも旅にも収入は必要、生きていくためには収入が必要。行くところを明らかに間違えた、合格通知がきても少しも嬉しくなかった感性は間違っていなかったわけでそもそも家から通えるところを最重要視して応募してしまったのが間違っていたのですが収入のために戻れなくなってしまいました。平日は悪い夢の中にいるような気がします。三年前と同じ。一日一日終わりに近づいていってはいるのですが、いんしつな空気の中で持ちこたえことができるのかしら、年を越したくない。さっさとクリスマスも終わり年が明けて、桜の花が散る季節になればいいなと思います。いやその前に都心よりもさらに灼熱地獄になりそうな夏に自転車乗ったりしないといけないの、生き延びていける気がしません。いやいやこの夏は二人のさゆみさんの退団公演を宝塚大劇場で観劇するのが目標、それまでは死ねないやね。だから必死に、地を這うようになんとか生き延びていくの。別に新しい人なんかいらないって、教えるの大変だって丸出しにされているところで、自分の感性と存在そのものが必要なかったとわかったところでつらいですけどね、それだけもらうものをもらってるんだろ、ボーナスもたっぷりでたんだろって思っちゃいますけどね、組織がねじれに満ちているのはいずこも同じぞ、どこらへんまで地域性と受け取めればいいのかわからないですが地方出身者が集まる首都圏とは違う、地方の特性は色々な意味であるのだろうと思います。面接のとき過剰なまでに人間関係、人間関係って言われたわけがわかりました。昨日今日で出来上がった空気ではなく長年の蓄積の結果だろうから、わたしと同じように全くなにも知らないで採用されて続かなかったという前例は間違いなくあるだろうと思います。わかっている人は近づかないということ、だらかいい人材はこない、どういうツテできているんだろっていう、女性よりもさらにいんしつな奴がいたりします。公平かと思っていたらすごくあやしい、もう二度と同じ事業体で働きたいと思うことはないかもしれません。失っても別にいい、じゃあどうするのっていう話なんですが・・・。わたし前職で関わりの深かった業種の人たちから困って電話が入るとその大変さがすごくわかる、ほんとはその人たちの仕事じゃないけど相談されたらやらざるを得ず良心でやっているってわかるからそういう気持ちで対応してしまうのですが、そんな感性は必要ない場所だとわかりました。援助職じゃないからひとつひとつ気持ちを寄り添わせたりするなど必要ないし、そんなことやってられないの、ほんとは人が好きじゃないの、そういう場所だからすごく苦しい。収入のためです、生きるとはそういうことなり。
来週の雪組の日帰りバスツアー、ランチをどこで食べようかな、公演デザートなんだろう、劇場だと慌ただしいから持ち帰ってきたいなあ、劇団のサイトをチェックしないと。その前に『オーシャンズ11』の写真整理できていないなあ。その前に持ち帰ってきたチラシとマニュアルを読めってか、吐きそうなりね。
生きることは大変、生きることは苦しい、ウエクミ先生の作品は、葛藤を抱えながら地を這うに生きる人の営みへの称賛と冷徹、両方の眼差しに満ちているように感じます。『星逢一夜』の早霧せいなさんと望海風斗さんが対決する場面、これで終わりかと思いきや、畳みかけるように魅せてくれた『金色の砂漠』のギィとタルハーミネの真っ白な衣装をまとった最後の大階段昇天、『神々の土地』のロシアの民たちのダンスなどなど、凄まじい熱量の舞台はライブビューイングもかなりエネルギーを消耗しましたが忘れられません。ウエクミ先生の次回作は、12月のタカラヅカスペシャル、それまでないのかな、どこの組で当て書き作品を生み出してくれるのか、気になるところです。
家の中もつらいですが体疲れちゃって動けないでいる土曜日、少しでも断捨離、断捨離・・・。