ついに、粘っていたムバラク大統領が辞任して民主化に一歩前進した。かつてインドネシアのスハルト大統領やフィリピンのマルコス大統領が親族だけで国家利益を独占し、「クローニー資本主義」といわれ、追放されたが今回のムバラク大統領も同じ穴の狢であった。一族のスイスや英国にある海外資産は5兆円を超えると海外のメディアは報道している。
国民一人あたりの所得は3000ドルにも達しないエジプト国民は昨年からの食料品やガソリンの高騰、9%を超える高失業率に怒りを爆発させた。治安警察により抑圧されていたのが隣国チュニジアの革命で目覚めたのだ。この間、通信手段としてネットの役割は大きく、エジプト政府がネットを監視し、不特定に広がるツイッターなどを遮断した中でフェイスブックは個人的な枠組と甘く見て遮断が遅れ、フェイスブックによる情報が今回の大きな革命劇に果たした役割は大きい。
しかし、今回のエジプト革命は背景に先に書いた物価の高騰と高失業率や暴かれたムバラク一族の腐敗が大きな要素でフェイスブック革命とは言い切れない。特に食料の高騰は世界的現象で、2006年秋頃に比べ1.7~3.0倍の水準だ。
穀物価格はオーストラリアやロシアの干ばつ等により、小麦を中心に上昇、2010年8月下旬以降、小麦からの需要のシフトや米国の生産量見込みの大幅な下方修正等により、とうもろこしを中心に上昇、11月下旬以降、アルゼンチンの降雨不足等により、とうもろこし、大豆を中心に上昇、一方、米は、パキスタン、タイの洪水等で8月以降上昇した。石油はWTI指数で見ると10年9月70ドルから今年に入り85~90ドルへ2割以上高騰している。
もう一つの背景は世界金融危機でここのところ欧米中心にジャブジャブに金融をゆるめ、投機資金が穀物や石油に回っていることも価格騰貴に拍車をかけている。
エジプトクラスの途上国では家計に占める食料とエネルギーの割合は4割をこえ、食料が2~3倍に高騰すれば生活に大きく影響する。他のクローニー資本主義の国でエジプト革命が波及することになるだろう。