日本でトップの新日本製鉄と3位の住友金属工業は3日、2012年10月をめどに合併する検討を始めた、と発表した。海外展開を加速させて新興国などでの旺盛な鉄鋼需要に対応し、鉄鋼業界の競争激化を乗り切るのが狙いで、10年の粗鋼生産量の規模では、アルセロール・ミタルに次ぐ世界第2位になる。という報道で昨日の日経平均は10500円を越え、歓迎ムードいっぱいだ。海江田経産相などは公正取引委員会は認めよと早くも牽制している。
背景は3つ有ると思う。1つは世界の20以上の鉄鋼メーカーを次々買収し世界一の鉄鋼王となったインド人ラクシュミ・ミタルの買収対抗策だ。鉄鋼会社に勤めたこともないミタル氏はこれまで買収したのはくず鉄工場ばかりなので、世界一の技術力で高品質の製品を生産する日本の鉄鋼会社が欲しいことは事実だろう。ミタル氏の資金力は新日鉄の時価総額2兆円強を上回っている。
もう一つはこの数年、原料である鉄鉱石を供給するBHPビリトン(英・豪系)は買収を繰り返し、鉄鋼会社を遙かに上回る巨大企業になり、価格支配力を確立しつつあることだ。2008年には大手リオ・ティント社(英・豪系)まで買収し鉄鉱石価格の完全支配力獲得に乗り出そうとしたが、リーマンショック後の不況で断念した。しかし、今年に入り、世界景気の回復に伴い、資源価格は上昇に転じており、日本鉄鋼企業も原料に対する価格交渉力を付ける必要があり、それには巨大化が不可欠だ。
次に鉄鋼産業は日本の勢いの良い高度成長時代、韓国のポスコ製鉄や、中国の宝山製鉄に最新の技術を給与して高炉の建設を援助した。その両製鉄会社もいまや日本企業の強力なライバルとなっており、今後伸びるアジア市場での競争力拡大も1つの課題だ。
鉄鋼産業は電機や自動車のように、機動的に海外に工場進出はできないので国内の工場の再編でリストラをし、世界一の技術を磨いてきたがミタルのような怪物が出現し、中韓からは追い上げられ、打開策としては合併しかないとの結論と見る。かつて新日鉄は富士と八幡の合併を経験しているが、日本製鐵という会社が敗戦後、連合国の命で分離したのが元に戻ったということと、当時稲山、永野という大物経営者が君臨していたからスムーズに合併が運んだ。しかし新日鉄と住金はかなり会社の体質がことなり、ネーミングからして難しい問題が控えている。