10月~12月期の決算が出そろい今3月期の年間決算では全上場企業平均で連結経常利益で53%の増益と報道されている。しかし先端産業たる電子産業の企業決算では大きな格差が見られる。日経の分析で、2007年10月~12月月期の営業利益を100として10年10月~12月月期の営業利益と比較したもので見ると、日立154%、三菱125%、東芝89%、ソニー73%、パナソニック58%、富士通46%、シャープ44%、NEC赤字といった状態だ。
大きな要因は、エコポイントで大きく潤うはずの大型薄型テレビで利益が上がってないということで皮肉なことにこの製品でシェアの低い日立、三菱がダントツの回復を見せている。音響家電でカラーテレビほど息の長い大型商品はない。私が入社した昭和41年にはカラーテレビの開発がほぼ完成して市場に出始めた。その後付随するVTRも開発され、まさに電子商品の中心的存在で今日まで来ている。
数年前から、電子産業利益構造のU字型曲線論が出てきた。縦軸に利益、横軸に電子部品企業、これを組み立てる大手の電子企業、販売する大型家電量販店を並べ利益率曲線を描くと部品と販売の利益率が高く、大手企業を底にU字曲線を描くという分析で今回は見事に一致している。村田製作所、京セラ、日本電産、日東電工など部品企業の営業利益率は12%前後でパナソニックやシャープはその半分以下、テレビに限れば赤字だという。家電量販大手のヤマダ、エディオン、ケーズ、コジマなどでは経常益は最高で薄型テレビ(コジマでは6倍売れた)、エアコンが寄与したと発表している。
この構造はメーカーがきちんと利益を出してきた自動車産業と異なるし、米国のアップル社のようにIphoneで4割も利益を出しているモデルとも違う。アップル社では設計開発は自社でやるがコア部品は韓国、組み立ては世界最大のEMSファックスコン(中国だけで90万人の従業員)に委託している。
日本で雇用を生み出し、日本で生産している企業の利益が低いというのは納得がいかない。この構造を解決しないとアップルモデルのようなことになってしまうのではないかと危惧をしている。