小麦、砂糖、コーヒー等いわゆる国際商品の価格高騰が生活に響いてきた。この背景は3つ、干魃など気候の影響、新興国の需要拡大、そしてQE2に象徴される投機に向かう金余りだ。日本は消費者価格を高くして米を余らせているので米については当面国際価格とは関係ないが、日常の野菜、果物を除く穀物価格は国際市況に影響される。昨年、菅総理が突然TPPを言い出して以来農業問題が大きな話題となったが、農業改革を大きな国民的課題とする良い機会ではないか。
先般、農業問題の専門家から話を聞く機会があった。受け売りの部分もあるが核心部分を紹介する。ここのところの農業問題をTPPに絡めて議論をしているが、菅総理の平成の開国、尊農開国は言葉遊びとしては良いが、日本の工業製品の関税率は先進国でも低く、とっくに開放しており平成の開国は当たらない。一方同じ政府の農水省がTPP反対のためにおかしな資料を公表している。
農水省の試算は関税がゼロになったら食糧自給率が4割から14%に落ちるとか、生産減少が4兆円になるとか、これに併せ農協は断固反対を叫んでいる。この試算はTPPの10年かけて関税をゼロにするということを無視して今すぐにゼロになるという非現実的な前提で、ためにする試算で信用してはいけない。
TPPに関係なく農業改革をしなければならないのは、農業経営者の平均年齢が65.8歳、耕作放棄地が40万ヘクタール、ほぼ埼玉県の面積に匹敵する現実、まさに「崖っぷち」にあるからだ。前回のウルグアイ・ラウンドのときは農水省や農協の言い分を抑えるために6兆円もの金をつぎ込んだが体質強化には役立っていない。どこに金が流れたか改めて明確にして欲しい。農業土木(道の駅や土地改良)関連にかなりの金が流れたのではないか
農業の中でも構造改革が進んでいる分野がある。いわゆる専業比率で見ると、畜産では93%、野菜で83%、果物67%で、遅れているのが米で専業比率は38%と低い。自由化すると海外から米がどっと入ってくると言っているが、世界は食糧不足の時代、なんでも買えると考えるのは間違いだ。米、麦、大豆、菜種など土地利用型農業では専業化を進め、生産性を上げ、それでも諸外国と格差がでる場合は欧州を見習い所得補償が必要だ。これだと農家に直接金が入るので農協や土木業からの反対が予想されるが、各政党の出方で農業改革の本物か否かが判る。