先日、JR東の清野会長から話を聞く機会があった。話題は自殺防止から新ビル開発までいろいろだったが、東日本大震災での安全対策が印象に残った。あの大地震にもかかわらず、270キロで走ってる新幹線が転覆を免れた。それは、きめ細かい安全対策がかねてよりなされていたからだった。地震が起きるとP波という微少なゆれがきて本震が来ることは既知のことで、エレベータではかなり以前からP波検知器を付けている。JRでは古い歴史のなかで貞観大津波のこともあり、沿線と海岸線にP波検知器を備え、今回もP波を検知して走行中の新幹線を止めた。もちろん本震が来た時には非常ブレーキをかけてもかなりのスピードで走行し,脱線の危険はあったし、事実脱線した車両もあった。
脱線し、線路から大きくそれて高架橋から落ちたら大事故になる。そのために脱線しても線路から逸脱しない工夫、線路を車輪と挟む金具を装備していたので全ての新幹線は大事故に至らなかった。またそれ以前に新幹線の高架橋は阪神淡路大震災で高架橋高速道路が破断し横倒しになったことを踏まえ、高架橋の柱や橋脚の補強工事を済ませていたことが幸いした。
鉄道や飛行機の経営では事故を起こし,乗客に犠牲が出ることは最大のダメージであり、安全対策は全てに優先されなければならない。今回のJR東の地道な安全対策が2008年までになされていたことがマグニチュード9クラスの大地震で乗客犠牲者ゼロという歴史に残る結果を生み出した。福島原発の事故とは対極となるケースだ。