行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

黒書院の六兵衛を偲んで

2013-05-15 23:44:15 | Weblog

日経に連載された浅田次郎の小説黒書院の六兵衛は最後まで何者か判らないまま終わった。主人公が何者か判らない小説というのは初めてで浅田次郎にしてやられたという感も無くはない。永遠のなぞにするのか将軍の隠し子にでもするのか次回作が興味深いところだ。

私としてはこの小説で初めて江戸城の西の丸御殿の内部を詳細に知ったのだが、現存する御殿は江戸城の中にはなく芝生の広場だ。しかし何とか見たいものと思いを巡らせた。川越の喜多院には春日野局の部屋が移され偲ぶことはできるが黒書院ではない。
そこで、京都に来た機会を利用して二条城を訪れた。ここには国宝の御殿がありそのなかに黒書院があり六兵衛が座った姿を偲ぶことができた。

二条城二ノ丸御殿は3300平米と広大で33の部屋があり見学できる。鶯張りの廊下が有名だが、一番奥に黒書院と白書院があり絢爛豪華な建築や装飾具、そして圧巻のふすま絵は狩野探幽をはじめとする狩野派が書いており、小説の舞台となった江戸城仮御殿と遜色ないと思える。

見学の順は、各大名の控えの間、大名と将軍が謁見する大広間、ここでは大政奉還が決められた歴史的な場所だ。黒書院はその奥で、将軍と親藩、譜代大名が密議を交わしたところで、白書院は将軍の居間と寝室で黒書院の豪華さと対照的に水墨画に囲まれた静寂な部屋だ。

見終わった後、江戸城本丸、西の丸御殿の焼失は返す返すも残念で文化財の大切さを痛感した。できたら復元できないものだろうか

コメント (1)
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