「日本はイギリスより50年進んでいる」などと自己満足本が書店に並んでいるが、実際の英国経済は日本どころか目下世界のトップクラスのパフォーマンスを遂げている。アベノミクスは大いに学ばなければならない。
英政府統計局が25日発表した2014年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比0.8%増(年率3.2%増)となり、規模でリーマン危機前のピークを超えた。消費の伸びに加え、法人税率下げの効果などで自動車を中心に国内製造業が活性化したためだ。
縁あって、仕事やプライベートで1980年代より、しばしば英国を訪れたが、英国は古き伝統の停滞している国と思われてるが、この30年実にダイナミックな国だと感じてきた。金融ビッグバンでロンドンが世界の資本市場や金取引の中心になって多くの雇用を生み出したことは記憶に新しい。しかし、それ故にリーマンショックの影響は大きかった。
克服するために取った政策は法人税の引き下げ(28%→21%)で外資、特に製造業を呼び込んだことだ。かつて、英国の自動車会社はロールスロイスにしろ、ランドローバーにしろ全て経営が傾き外国企業に買収され、英国籍の自動車メーカーは皆無となった。それでも英国政府は法人税を下げ、外資を優遇した結果、BMWのロールスロイス、インドタタのジャガーやランドローバーは英国での生産を続け、復活を遂げた。自動車産業は英ポンドが対ドルで6年ぶりの高値圏にあるにもかかわらず、14年上半期の輸出台数は前年同期比4%増え、年間の生産台数は10年ぶりの記録となる160万台に達する見通しだ。日本の日産も80年代サンダーランドに工場をつくり、EU市場へ供給している。
ソーシャルエンタプライズという社会福祉企業が発達して、国の福祉を担い、地方に大きな雇用を生み出していることも特筆すべきことだ。
唯一気掛かりなのは、不動産バブルで、この点は日本とよく似ている。