リコーが、希望退職に応じなかった社員約100人を「追い出し部屋」に移動させ、更に出向・配転命令を行った行為に対し、命令を無効とする地裁判決が控訴審で争われたが、高裁でも無効とする判決が下った。労使が和解することになったが、人材を軽く扱ったという職場のしこりは残る。企業は人なり、今後経営側の努力が見られないと人材を集めることは難しい。
出向や配転命令は、企業の人事裁量権の一つとして、認められているが、権利を乱用した場合は無効になるという判決だ。リコーの今回のケースは常識的に見て人を大切にする企業のやることではない。
先ず、人員削減の方法で、人減らしを各部署ごとの削減人数を「6%」と機械的にはじき出したり、対象を選ぶ基準が不透明だったりして、納得性がないことだった。
次に出向者選定で、対象者のキャリアと、出向先での仕事が大きく違っていたことだ。例えば、退職勧告に応じない技術系で採用した社員を物流子会社へ出向を強要した。中には退職強要と出向命令で追い詰められ、鬱病になった社員もいた。
今回の裁判では、リコーは「退職勧奨マニュアル」を作成し、対象者が退職を拒んでも上司が説得できるように対応している。上司だって嫌な仕事を会社から押しつけられるわけだが、あくまでも事務的に対応するようにマニュアル化している。
退職勧奨の常套句は「今後あなたにやっていただく仕事はなくなり、今止めれば会社都合退職となり、加算金も出る」退職しないで「配転先や出向先で慣れない仕事だからといって退職したら自己都合退職になり、退職金は減額になるかも」といったセリフだ。
万が一、企業の経営に危険が迫っても、企業を支える人への配慮は十二分に行わなければならない。安易なマニュアルでリストラを行うことはダメという今回の判決だ。