フォルクスワーゲン(VW)が一部のディーゼルエンジン車に違法ソフトウエアを搭載し、米国で排ガス規制を不正に逃れていた問題が発覚、その後欧州でも同じことをやったのではと、米国だけでなく地元ドイツ、スイス、イタリアでも調査するとのことで、自動車株は大きく下げ、影響はグローバル化している。
欧州のディーゼルエンジンの普及は約5割、クリーンディーゼルのイメージはダメージを受け、窒素酸化物が想定以上にばらまかれてきたのではとVWだけでなく他メーカーもチェックを受けることは間違いない。触媒に使うプラチナの価格も下落している。ドイツは会社組織が資本主義国ではめずらしく、取締役会の上に最高意思決定機関の監査役会があり、監査役会は労組・従業員代表や経営側代表、社外の中立委員などからなり、その企業の統治能力と透明性により信頼されてきた。そうした組織が製造する製品は高品質で、信頼性が有り、消費者は安心して値段が高くともドイツ製品を選択してきた。裏切られた消費者の怒りは大きく、気の遠くなるほどの訴訟の嵐がVW社を襲うことになる。
私も監査役会の労組・従業員代表に知人であるベルトフェルト・フーバー氏が就任しており、今後の動向を注目したい。監査役会のウィンターコルン会長は20日、排ガス規制逃れのため一部のディーゼルエンジン車に違法ソフトウエアを搭載していた問題で「信頼を裏切り、深くおわびする。全グループ60万人の従業員の一部が犯した」と謝罪し、辞任した。メルケル首相も「徹底した透明性」を求めており、監査役会は事実関係を解明するために外部調査を依頼した。フーバー氏は副会長であり、今後の事実解明の陣頭指揮を執ることになろう。
ドイツには多くの友人がいて付き合いも長い、ドイツ人の真面目さは永年閉口しながらもよく判っている。透明性を確保しながら地道に解明すると信じてVWの調査の行方と対応力に注目したい。