昨年の秋場所は逸の城旋風が吹き、横綱鶴竜や大関稀勢の里をはじめ役力士が総髪の新人に次から次へと破れたが、白鵬が逸の城を問題にしないで面目を保った。1年後、逸の城はまさかの伸び悩み、代わりに先輩の照ノ富士が躍進し、綱取りの大手をかける勢いだ。この秋場所は鶴竜が決定戦を制し、初優勝したが、15日間満員御礼にしたのは照ノ富士で有り、特筆すべきは殊勲敢闘両賞に輝いた11勝4敗の嘉風の貢献だ。2横綱2大関をやぶり、台頭する若手にもその技能とスピードで相撲の勝ち方を披露し、相撲の醍醐味を見せてくれた。嘉風といえば昨年の名古屋場所、横綱日馬富士戦ではお互いの技能を駆使し、大熱戦の末に破った一番は相撲史上に残る。
秋場所ではそうした素晴らしい力士の活躍で盛り上がった反面、期待外れの力士もいた。その筆頭は白鵬の休場で初優勝を遂げるのではと期待された稀勢の里であり、前半の好調を持続できなかった栃煌山であり、負け越した豪栄道だ。豪栄道は大関昇進したきっかけになった白鵬を破った相撲を忘れてしまったかのようだ。
横綱鶴竜は朝ドラの合い言葉「地道にコツコツ」努力をして頑張っているが、優勝をもぎ取った稀勢の里戦で逃げて(立ち会いの変化)運良く勝った相撲は今後止めて貰いたい。秋場所に優勝したからといって決してヒーローではなかった。満員御礼への寄与度は低かった。
来場所は、照ノ富士の負傷が治っていると良いのだが、期待したいのは1年前の怪物逸の城の復活だ。両大型力士があばれ、これに嘉風や妙義龍がスピードと技能でどう立ち向かうかといった風景を見たい。