行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

春闘番外編がにぎやか

2019-04-06 18:34:16 | 労働
2019春闘、全体賃金増が3%にも届かず不振を極めているが、経営側主体で番外編がいろいろと出てきた。背景は人材不足、特に優秀な人材を確保(採用と流出防止の二面性)しないと企業の死活問題となる危機意識がある。しかし、落とし穴もある。
 
先ず組合の要求(0.5%のベア)の倍の回答1%アップをして、組合員に覚悟を迫った三菱UFJ銀行、ゼロ金利下で銀行の経営は厳しい。フィンテックで競争も激しい。三菱UFJ銀全体で構造改革が必至だ。かつては大卒の大量採用の同行も採用を絞り、2023年度末まで6500人が自然減で減少する。その間、業務量の削減は3000人分となる。定型業務をITで自動化し、将来は1人あたりの負荷も軽減されるが、目先の数年は従業員減のほうが早く、負荷が掛かる。組合員に覚悟を迫った回答だ。
 
ユニクロのファーストリテーリングは現在21万円の大卒初任給を、2020年春入社で国内や海外の転勤がある職種については21%高い25万5千円にすると発表、採用予定の約650人のうち、国内外の転勤のある職種は数百人にのぼる見込み。19年春に入社した新卒社員の給料も見直すとのこと、20%を超える初任給アップは例がない。年功序列賃金だと全体の底上げにつながるからだ。積極的な海外展開を進めるために優秀な人材が欠かせないが、外資系企業や国内の大手商社などに学生をとられないよう、商社の初任給(三菱商事、三井物産と住友商事が19年春で25万5千円)を意識した額だ。18年春入社の初任給は20万6700円だから下なりのレベルと言えよう。
 
IT関連ではもっと凄いことが起きている。LINEは新卒採用で、高度な技術を持つエンジニア向けの選考コースを設けた。20年春の新卒採用では、初年度の固定年俸の最低額を700万円と、19年春の約600万円から引き上げた。通常の選考コースで採用されたエンジニアの最低額528万円に比べ、200万円近く高い。
 
初任給で数百万円単位で差をつけるのは保育士の転職支援を手掛けるスタートアップのネクストビート。19年の新卒社員から一律の初任給を撤廃し、資格やスキル、内定後のインターンでの実績などに応じ、年俸が420万~840万円の範囲で決まる。
 
勇ましい賃金増だが、落とし穴もある。処遇というのは公正でなければ全社のモラルは低下する。一部の厚遇が多数の不満を呼ぶという事例だ。ユニクロにしても一部の幹部候補生を優遇しても、大部分の非正規社員をどう処遇して行くかに気を配らないと、小売業で起きてるバイトテロみたいなこともあり得る。LINEでも、同じエンジニアで初任給を200万も差をつけるとなると、評価システムが納得性を持たないと、不満を持つとサヨナラと云うことになる。
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