アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

映画の中のピアノシーン

2019年10月08日 | ピアノ
昨日の日記にも書きましたとおり、「蜜蜂と遠雷」に出てくるピアニスト役の方々のピアノ(を弾く動作)はうまくありません、っつかかなり下手だけども

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映画として見ているときにはそんなに気になりません。

それはもちろん、聞こえてる音は真央ちゃんや福間さんの演奏だから、ってのもあるけど、
撮影の仕方、編集の仕方で工夫しているからですね。

映画的工夫としては、
(1) 手を映さない
(2) あまりアラが目立たない部分で手を映す
(3) プロの手を映す
があるわけですけど、これをどういうふうに組み合わせるかが腕の見せ所です。

昨日の記事に貼った月夜の連弾シーンは、その絶妙な組み合わせ、もう作品といってもいいレベルだと思います。

(2) がなるべく活用できるように、俳優さんは猛練習するわけです。

「のだめ」のときは相当練習したようですね…

「羊と鋼の森」のピアノ、ふたごの役で出てくる子たち(ほんとは姉妹だって)、実際にかなりピアノ弾けるらしくて(2)を多用していました。ピアノ弾ける子、というのもキャスティングの条件のひとつだったかもしれませんね。

「蜜蜂と遠雷」では、そこんとこあんまりこだわらないキャスティングであったようです。

映画パンフレットに、撮影監督の人のコメントがあったのですが、
「演奏者の手と顔を同じフレームの中に同時におさめるタイミングについては、俳優たちを交えて話し合いました」
「たとえば俳優には弾くのが難しいシーンがあるとします。でも、それをワンショットで撮りたい。どうするか。まず、ピアノと指揮者の周りにドリー・レールを敷きます。カメラはまず、俳優が演奏しているところを撮り、次にオーケストラの様々な楽器を撮り、指揮者を撮る。その間に俳優をプロのピアニストに差し替えて、鍵盤を弾く手だけを撮る」

つまり、元々ピアノを触ったこともないような人が猛練習をしてもプロコフィエフのコンチェルトやらの動きをできるようになりませんから、(3)を使うのですが、そこを(1)とワンショットで撮影することで映画の嘘を強化するのです。(*)

「蜜蜂と遠雷」はそこんとこ、とても上手にやってあったと思います。

ただ、ほんとうに真に迫る絵を作るためには、ピアノの場合、実は(1)がネックだと思います。

ピアノの鍵盤上、正しい音を打鍵することにかけては相当練習を積んであっても(例えば、のだめ)、
上半身の動きが実際素敵な演奏をするにしちゃとても変なところが残っていて、
それはちょっとやそっと練習しても改善しにくい。

たとえば、私がショパン舟歌を弾く場合と、
プロがショパン舟歌を弾く場合で、
音はナシにして、手を除く上半身だけ映して、
まぁテンポでバレちゃつまらないので私でもテンポどおり弾ける箇所だけを切り出しましょうか…

それでもどっちがプロだかわかっちゃうでしょう。そういうもんです。

なので、猛練習して「吹き替えなし(映画/ドラマで吹き替えなしというのは映像で(3)を使わないことを指します。もちろん音声は吹き替えです)」にこだわってもそんなにリアリティーが増すわけじゃないので、まぁほどほどにして撮影/編集によるリアリティーづくりに邁進するのが正解かなという気はします。

(コウノドリとか、戦場のピアニストとかは、猛練習の末、ほとんどこの「吹き替えなし」でやってるらしいですが、やはり見た目の違和感はあるので)



(*) ところで、「蜜蜂と遠雷」の中で、「(3) プロの手を映す」の「手」は真央ちゃんたち四人のピアニストの手ではありません。上記撮影監督コメントにあるような面倒な撮影シーンに真央ちゃんたちを協力させるわけにはいきませんから、いちおうピアノコンチェルトの音に合わせて打鍵できるけどもっと無名の人にやってもらっているはずです。

なので、明らかにプロ(というか俳優さんでない)の手で鍵盤弾いてるのに、なんかその弾き方でこの音が出ないような気がする、という違和感はときどきあります。


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