子供の頃、秋の午後三時過ぎに、明るく澄んでいるのに何故か一刷毛の薄墨を加えたような青黒い色彩をした空を見たことがある。
私はその色をどうしても手元に残したくて、何度も絵の具の青と白、それに空色と黒を混ぜては画用紙に筆で塗りつけるのを繰り返した。
やがて本物には及ばないが何とか妥協できる色合いの空になったので、嬉しくなって部屋の壁に飾っておいた絵の色は、しかし日に日に色褪せてしまった。悲しんでいる私に、この世界にある『本物』は、いずれ必ず空に還る運命にあって、あの空の色もきっと本物そっくりだったから空に還ったのだろうと母が言った。
私はその色をどうしても手元に残したくて、何度も絵の具の青と白、それに空色と黒を混ぜては画用紙に筆で塗りつけるのを繰り返した。
やがて本物には及ばないが何とか妥協できる色合いの空になったので、嬉しくなって部屋の壁に飾っておいた絵の色は、しかし日に日に色褪せてしまった。悲しんでいる私に、この世界にある『本物』は、いずれ必ず空に還る運命にあって、あの空の色もきっと本物そっくりだったから空に還ったのだろうと母が言った。