カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第七十三景・夜桜女郎

2019-04-04 19:58:06 | 桜百景
たかあきは、夜の異郷と桜の髪飾りに関わるお話を語ってください。

 旅の空だ、せいぜい羽を伸ばそうぜと半ば無理やり連れていかれた色街で出会った女からは何処か懐かしい香りがした。淫楽の場に相応しくない清冽で僅かに苦味を帯びた香りが一体何であるのかもわからぬまま共に一夜を共にした朝、闇夜では気付かなかった桜の髪飾りに目が留まる。散り際の潔さが好きなのだと女は寂しげに笑った。
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骨董品に関する物語・ヴィクトリア時代の涙壺

2019-04-04 19:40:44 | 突発お題

 僕はもう死ぬと言った彼に対して泣き止まないまま決して忘れませんと答えた彼女へ、この涙壺に溜まった君の涙が乾いたらどうか僕のいない新しい生活を受け入れて欲しいと彼は告げ、結局はその通りになったのだが、涙壺の蓋を僅かに歪めて隙間を作ったのは彼だったのか、或いは。
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