カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第八十五景・折られた枝

2019-04-22 21:18:56 | 桜百景
たかあきは、悪夢の初恋と桜の枝に関わるお話を語ってください。

 恋した女の子の奴隷に成り下がった幼い頃の僕は、命じられるままに公園の桜の枝を折って管理人のおじさんにしこたま怒られた。あの子が欲しいと言ったからと僕が指差すと、彼女はそんなの知らないと叫ぶなり逃げて行った。その背中を無言で見送りながら女は選べよと忠告してくれたおじさんの優しさは、まるで自分が折り取られた枝にでもなったかのように酷く痛かった。
コメント

骨董品に関する物語・ボンボンスプーン

2019-04-22 20:18:16 | 突発お題

 穴の開いているスプーンで何をすくうの?妹の問いかけに僕は少し考えてから、穴が開いているから不必要なものまで掬わなくて済むんだよと答えた。すると妹は納得したように、それじゃ神様の持っているスプーンはきっと穴だらけなのでしょうねと言ってきたので本気で返答に困った。
コメント

骨董品に関する物語・フロストガラスのボンボニエール

2019-04-22 20:15:38 | 突発お題

 お菓子を際限なく欲しがる娘に嗜みを覚えて欲しかった彼女は小さな硝子製の菓子器を渡し、貴女が一日に食べていいお菓子はこの菓子器に入っている分だけよと言い渡した。最初のうちは我慢していた娘だったが、やがて癇癪を起して菓子器を叩き壊し、そして当然だが砕け散ったのは菓子器だけでは済まなかった。
コメント