カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・菫色のリボンスカーフ

2019-04-27 18:13:44 | 突発お題

 このリボンスカーフは多分未完成だよと彼女は言った。刺繍図案のパターンからすると本来あるべき図案が使われていないのだそうだ。それに他と比べて未熟な針痕も少し混じっているから、何かの事情があって刺繍が中断した後で別の誰かが完成させたのだろうねと。それが本当だとしたら、このスカーフが完成するまでの物語は美談なのか、あるいは悲劇なのか。
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骨董品に関する物語・金継の入ったデミタスカップ

2019-04-27 18:11:15 | 突発お題

 新しい義母は優しかったが、亡き母が大切にしていたカップを割った時に新しいものを用意しましょうねと微笑んだ姿に私の中でも何かが割れてしまい、その時点では必死に修復しようとカップの金継を依頼したのだが、修復されて戻ってきたたカップが再び義母の手で割られた時、今度こそ本当に何もかもが修復不能になった。
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第九十景・人喰い桜

2019-04-27 10:21:53 | 桜百景
たかあきは、真夜中の田舎と桜の狭間に関わるお話を語ってください。

 その時期、僕の暮らしていた田舎の夜道に浮かび上がる光は天を彩る月星の白々と冴え渡った輝きだけではなかった。彼方の森に広がる薄らとした紅色の霞はその蠱惑的な色彩で視線を奪い、美しさに魅せられた人間が突然に薄紅の散る森で首を括り、桜に食われたと囁かれるのも珍しいことではなかった。
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骨董品に関する物語・ヒュギエイアの杯のブックマーク&レターオープナー

2019-04-27 00:20:48 | 突発お題

 蛇は楽園で暮らすイブを唆して知恵の実を齧らせたことからキリスト教では悪魔の象徴とされているが、かつては楽園や不死を引き換えに手にした知恵が人間を神の軛から解き放ったとする教義も存在した。異端とされ消え去った教義にどれほどの真実が含まれていたのか、今となってはは知る術もない。

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骨董品に関する物語・ケース入りペーパーナイフ

2019-04-27 00:19:05 | 突発お題

「ペーパーナイフの出物があったんだが」
「ほう、これは見事な」
「俺も知らなかったがペーパーナイフは昔の袋綴じ装丁の本を切り開く為に使ったそうだ」
「手紙を開封する為だけのモノじゃないんだな」
「しかし袋綴じと言うと週刊誌の特別企画で」
「それ以上何も言うな」
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