カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その26・彼の浪漫と私の現実

2019-06-16 17:33:25 | 旅人の記録
たかあきは晩夏のド辺境に辿り着きました。名所は神殿、名物は砂糖菓子だそうです。

 しつこく暑さの残る季節に何度か汽車とバスを乗り継いで訪れたのは、昔から地元民が古代の神殿跡だと言い張る遺跡だった。旅行の目的地を決めた彼は大喜びだったが、私はこんな観光地とも呼べない僻地で一体何をしているのだろうと思いつつ、汗だくのまま塩を配合したレモン味のキャンディーを舐める。
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骨董品に関する物語・クラウドガラスの花器・その2

2019-06-16 17:15:19 | 突発お題

 父が母の大切にしていた花器を容赦なく砕いた時、私達家族の絆も粉々に砕け散った。だから私は長い間母の持っていた花器と同じものを探し求め、とうとう色違いではあったが見つけることが出来た花器を母に贈り物として渡したのだが、母はこれはもう私ではなく貴女のものなのよと寂しそうに微笑んだ。
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骨董品に関する物語・クラウドガラスの花器・その1

2019-06-16 17:12:50 | 突発お題

 母のお気に入りだった花器は驚くほど花保ちが良く、いつまでも瑞々しい花弁に感心しながら、どうしてこの花器だけお花が綺麗なのと尋ねると、この花器は流れを止めて作ってあるの、だから花器の周りは少しだけ時間が止まっているのよと言われた。今から思うと、あの言葉は何時までも何も変わらずにいて欲しいという母の願望だったのだろう。
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