カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

貴方を見ています

2016-02-15 01:05:10 | 依頼です、物書きさん。
病弱な画家とバスケに恋をした少年、二人にとって幸せな結末の話

 己に無い物を他者に求めるのは世の常だが、学生時代は体育の授業を見学ばかりしていた僕はアトリエの窓から見えるゴールポストで絶えずバスケの練習をしている少年の姿に魅せられ、彼のすんなりと伸びた手足やバネが撥ねるような跳躍をスケッチし続けた。ある日、少年が故障で試合を断念して塞ぎ込んでいると知った僕は伝手を辿って彼に会い、僕には君がこう見えるんだと言って絵を渡した。
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牡丹灯籠と俺に謝れ

2016-02-12 00:50:05 | 依頼です、物書きさん。
無気力な霊感男と格好良いけど草食系な変質者、彼らの最初で最後の「大喧嘩」の物語

 親友同士を自負する男二人が喧嘩をする原因と言えば女と相場は決まっているが、今回も例外ではなかった。だが、理想の相手をようやく見付けたと喜ぶイケメン(ただし変態)の相手が死霊とあっては普段無気力な俺(霊感持ち)も黙っていられなかったのだ。結局、激しい攻防の末にヤツの変態さ加減を嫌と言うほど思い知ったらしい死霊はヤツを見限り、死霊の姿を求めて号泣するヤツを、俺は思い切り殴り倒した。
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寒椿

2016-02-11 00:18:59 | 依頼です、物書きさん。
馬鹿正直な職人と愛情過多気味の義母が小さな奇跡

 俺が一番最初に作って母に贈った櫛が何の前触れもなく割れた時、町に出かけていた妻の眼前をハンドル操作を誤った大型トラックが掠めていったと言う。櫛は俺よりむしろ妻の方を好きだと公言して憚らない母が庭の隅に埋めたが、数年後にはそこから植えた覚えのない椿の樹が生えてきて、櫛に彫り込んだ俺の拙い模様などより遙かに見事な椿の花を幾つも咲かせている。
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真夜中過ぎのサンディ・クローズ(鉤爪の男)

2016-02-10 21:02:27 | 依頼です、物書きさん。
ボランティア精神溢れる女子高生と自称「サンタクロース」の男との密室での奇妙なお話

 人の気配に目覚めたら、赤い服を着た男が鉤爪を振りかざして私を見下ろしていた。これは季節外れのサンタに違いないと思って今の時期は女子高生より施設にランドセルや学用品をプレゼントした方が絶対に喜ばれると力説した。ついでにタイガーマスクの原作者の興味深い人物像と波乱含みの人生について延々と説明していたら途中で泣き叫びながら帰ってしまった。
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人生は万事が塞翁ん家の馬

2016-02-09 00:33:32 | 依頼です、物書きさん。
ふざけた会社員と慰め方すらも一般から懸け離れたサドが、日常を変える「賭け」をする話

 拉麺王にオレはなる!と誓ったかは知らないが、幼馴染みが脱サラして店を始めると言い出したので、それは借金を背負って家族にも見捨てられた末に野垂れ死にしたいと言う意味かと尋ねたら激しく怒鳴られた上、今に見ていろと宣言された。そんな訳でヤツが野垂れ死ぬのを確認する為ヤツの店に通い詰めていたら、やがて店は行列の出来る有名店になっていた。
 もちろんそれが大いなる罠であったことなど、その時のオレ達は知りようもない。
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我が侭娘とレンタル彼氏

2016-02-08 00:13:20 | 依頼です、物書きさん。
ひねくれ者のいじめられっ子と自ら首輪に繋がれることを望んだ男が、期間限定の恋人として振る舞う話

 卵と鶏のどちらが先なのかはともかく彼女の性格と育った環境は明らかに最悪としか言いようがなく、故に彼女は必然的に周囲の嫌われ者となり、疎外されるようになった。
 そんな最愛の娘を哀れに思った馬鹿親が普段通りに親馬鹿ぶりを発揮して、大金で雇い入れた見目麗しい若者を『オトモダチ』としてあてがったその日から、二人は激しい戦いに満ち満ちた一週間を繰り広げることになる。
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終章・犬使いの果実

2016-02-07 22:11:29 | 犬使いの果実

 ずっと長い間、ヨナスにはどうしても判らなかった。
 どうして犬使いの果実を口にしたものは、その殆どが死んでしまうのだろうと。
 果実に通常の意味での『毒素』は含まれていないし、かれらの死因は大概が自ら舌を噛み切った事による窒息死だったのだ。
 だが、今、こうやって握り締めた果実を見詰めながら、ようやくヨナスは理解した。

 犬使いの果実とは、つまり覚醒の果実なのだと。

 この果実を口にしたものは、己が一体何者であるのかを容赦なく意識上に引き摺り出される。そしてそれは大概、思う自分になれぬまま現実と言う名の泥沼を這いずる、この上も無く滑稽で惨めな姿として認識されるのだ。だから大概のものは、この時点で耐えられずに己の舌を噛み千切る程に苦しみ抜いて死ぬのだろう。
 そして、残りのごく僅かなものはそんな己の意識を捨て去り、何か別の存在へと変成する。そして嘗ての己とは全く違った存在として生きて行くことになるのだ。嘗て優秀だった犬が殆ど助からなかったのも、なまじ優秀だった己の存在を全否定することや、全く別の何かに変わることが出来なかったからに違いない。

 だから、犬使い以外の何者にもなれない自分はきっと今、ここで死ぬのだ。

 そんなことを考えながら、ヨナスは躊躇いなく己が手にした果実を口元に運び、そのまま囓った。

*   *   *

 今より少しだけ昔、一年の殆どが雪と氷に閉ざされる北の国は冷酷な独裁者の一族に支配されていました。
 独裁者達は長年、悪魔のように知恵の回る犬を操る犬使いを使って国民の心を恐怖の鎖で縛り上げて来ましたが、そんな犬の牙から辛くも逃れ、顔に酷い傷を負いながらも他国に亡命した若者によって、やがて政権を解体されることになりました。
 しかし、独裁者一族の配下にあった犬使いは捕縛の手が伸びるより早く己の館に火を放ち、余りに火の周りと勢いが酷かったので、そこに居たはずの犬使いも、また犬たちも、骸一つ見付けられなかったと言うことです。



犬使いの果実・終

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夏は来ぬ

2016-02-05 00:19:59 | 依頼です、物書きさん。
ド近眼な考古学者と血の繋がりのない弟による夏が恋しくなる物語

 考古学者の兄と僕はお互い父と母の連れ子なので血の繋がりは無いが仲は良く、進学で家を離れてからもまめに帰省して一緒に遊んだりする。そんなある年のお盆、今日は随分と客が多いなと眼鏡を外したままの兄が言うので不思議に思っていたら、迎え火を間違えて余所のうちに来たようだと笑って報告してきた。
 ちなみに理由は不明だが、お盆の『帰省客』は何故か眼鏡を外していてもはっきり見えるとは兄の談。なお、僕には何も見えない。
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ベロ出しチョンマ

2016-02-04 22:24:43 | 依頼です、物書きさん。
数年後の未来から来た教師と全力で捨て身の笑いを狙ってくる美女との感動系の話

 僕の教え子だった彼女は美人だが、その雰囲気をぶち壊して余りあるギャグに走る悪癖があった。一体どうしてそんな行動に出るのだろうと悩んでいた僕は、ある日何故か巻き戻った時間の中で僕と出会う以前の彼女に遭遇し、彼女がどうして体を張ってまで周囲の笑いを取ろうとするのか、その哀しい理由を知った。
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あしたは、きっと、はれ

2016-02-03 22:36:09 | 依頼です、物書きさん。
触れられることに不慣れな運転手と迷子の子どもとの感動系の話

 赤ん坊の時に捨てられた僕はお客を正面から見なくても良いという理由で運転手になった。なのに、あの子は僕の手を掴むと顔を真っ直ぐ見上げながらママを知りませんかと聞いてきた。放っておく訳にもいかずに一緒に母親を捜してやると、程近い場所にいた女性の元に駆け寄って行き、それが外面だけは良い僕と、離婚した夫に暴力を受け続けてきた母子との出会いで有り、同時に始まりとなった。
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