カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第八十八景・老木と若葉

2019-04-25 19:06:08 | 桜百景
たかあきは、朝の友達と桜の枝に関わるお話を語ってください。

 病院の中庭で仲良くなったお爺ちゃんは僕と同じ入院患者で元気な時は漫画のお話を書く人だったそうだ。僕がもっと大きくなったらお爺ちゃんの書いたお話を読んであげるねと言うと嬉しそうに笑ってくれた。あの後すぐ僕は退院したけど、お爺ちゃんも今は元気になって、また漫画のお話を書いているのだろうか。
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第八十七景・破れ汚れりゃ錦も襤褸に

2019-04-24 20:47:19 | 桜百景
たかあきは、迅雷の初恋と桜の上に関わるお話を語ってください。

 雷に打たれたような衝撃と共に告白したオレの初恋は、相手から済まなそうに返ってきた詫びの言葉で終わった。一体何が悪かったのだろうと親友に尋ねると、相手に対する無神経と無配慮が酷い、むしろお前に恋人としての良い点を見つける事自体が出来ないと断言されてあの世に逃避してしまいたくなった。
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ドラゴンの日

2019-04-23 20:54:53 | 突発お題

 で、どんな竜が欲しいのかと訊かれたので家で飼えるヤツと答えたら、渡されたのは青灰色の毛並みと金色の瞳を持つ、どう見ても猫だった。猫じゃないかと文句を言ってもこれは竜だと断言されて仕方なく家に連れ帰った。そんな訳でうちの竜は空も飛ばず火も吐かずただの猫にしか見えないが実は竜なのだ、多分、きっと、或いは。
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第八十六景・舞い踊るひとたち

2019-04-23 19:06:59 | 桜百景
たかあきは、真夜中過ぎの公園と桜の下に関わるお話を語ってください。

 昔は春になると公園で歌ったり踊っているひとをよく見かけた。たまにいい年をした大人が派手に遊具を揺らしながら大声で歌っていたりもするので危ないなと思っていたが、そういうひとたちは成長するうちにいつの間にか見えなくなっていたし友人にもそんなものは見たことがないと言われた。僕も今では深夜の公園の桜の散る元でしか、そんなひとたちを見かけなくなった。
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第八十五景・折られた枝

2019-04-22 21:18:56 | 桜百景
たかあきは、悪夢の初恋と桜の枝に関わるお話を語ってください。

 恋した女の子の奴隷に成り下がった幼い頃の僕は、命じられるままに公園の桜の枝を折って管理人のおじさんにしこたま怒られた。あの子が欲しいと言ったからと僕が指差すと、彼女はそんなの知らないと叫ぶなり逃げて行った。その背中を無言で見送りながら女は選べよと忠告してくれたおじさんの優しさは、まるで自分が折り取られた枝にでもなったかのように酷く痛かった。
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骨董品に関する物語・ボンボンスプーン

2019-04-22 20:18:16 | 突発お題

 穴の開いているスプーンで何をすくうの?妹の問いかけに僕は少し考えてから、穴が開いているから不必要なものまで掬わなくて済むんだよと答えた。すると妹は納得したように、それじゃ神様の持っているスプーンはきっと穴だらけなのでしょうねと言ってきたので本気で返答に困った。
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骨董品に関する物語・フロストガラスのボンボニエール

2019-04-22 20:15:38 | 突発お題

 お菓子を際限なく欲しがる娘に嗜みを覚えて欲しかった彼女は小さな硝子製の菓子器を渡し、貴女が一日に食べていいお菓子はこの菓子器に入っている分だけよと言い渡した。最初のうちは我慢していた娘だったが、やがて癇癪を起して菓子器を叩き壊し、そして当然だが砕け散ったのは菓子器だけでは済まなかった。
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第八十四景・花を蓄える

2019-04-21 22:19:31 | 桜百景
たかあきは、冬の友達と桜の根に関わるお話を語ってください。

 桜が春に綺麗な花を咲かせるのは夏から秋にかけて茂らせた緑でエネルギーを蓄えているからだし、落葉の終わった冬は貧相に見えるかもしれないけど次の春に備えての休養期間だ。で、君は自身の花を咲かせる為に一体どれだけのことをやって来たのかなと尋ねられた私は、彼に返すべき言葉を思い付けない。

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骨董品に関する物語・天使と悪魔の宝石箱

2019-04-21 16:53:50 | 突発お題

 叔父さんの持つ宝石箱には天使と悪魔の意匠が共に使われている。中に入っているのは宝石の付いた指輪で、宝石箱は叔父さんの奥さんだった女性の形見である指輪を収める為に作られた。天使が花園で遊んでいるような楽園で暮らす仲睦まじかった筈の夫婦にどんな悪魔が忍び寄ったのかは、叔父さんを含めて誰も私に教えてくれない。
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骨董品に関する物語・天文系ガラススライド・その2

2019-04-20 13:15:06 | 突発お題

 その後、色々あって老教授が引退されるとき、何故か僕に例の架空惑星が描かれたスライドガラスを譲ってくださった。こういったものは嫌いではないので伝手を辿って特製の最新鋭幻灯機を入手して書斎に飾っているが、たまに老教授の恩師が思い描いたという宇宙の何処かに在る筈の約束の地について想像してみる。
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