昨年11月23日、初台にある東京オペラシティにて行われた、
「イーハトーヴ交響曲」の世界初演。
富田勲氏が宮沢賢治の物語をテーマに作曲した「イーハトーヴ交響曲」を、
大友直人指揮による日本フィルハーモニー交響楽団と合唱団で奏でる、
初演公演。
そこにソリスト参加するのがボーカロイドの初音ミク。
これだけでも、かつてないオーケストラコンサートだし、
この企画を発案したのが日本を代表する作曲家であり、シンセサイザーの
始祖でもある世界の「TOMITA」である事に意義がある。
先日、スペースシャワーTVで紹介されていたのが
「数台のPCで初音ミクの歌声と動きをオペレート」するシステム(バック
アップ含む)。
ミクの姿は、オペラシティのシンボルであるパイプオルガンに垂らされた、
スクリーン投影による演出。
今回の公演は、
初音ミクが事前にミックスされたものではなく、オーケストラの指揮者に
合わせて歌い動くという点が何よりも注目される部分だった。
番組で明かされた「歌の秘密」は、なんとシンセサイザーの鍵盤1個1個に
初音ミクの声が登録されていたとの事!
指揮者の前でそのキーボードを演奏していたのは、
篠田元一(しのだ もとかず)さん。
Wikiによると、
「1958年11月30日生の日本の作曲家・編曲家・キーボーディスト・ピアニスト。
ジャズ・フュージョン・ポップス・クラシック・映像音楽など幅広いジャンルで
活動を展開。また音楽理論や音楽制作に関する書籍も多数執筆している」人物。
また、1998年から翌年にかけて冨田勲の源氏物語交響絵巻コンサートの国内外
公演にも参加されている。
富田勲先生との活動経験あり、信頼されての起用でしょう。
長髪で若々しい篠田さんが同期システムを語りながらキーを一つ押すと
「ミ・ク」という声が。
プリセットという技術はデジタルだが、人力での演奏と云う行為は
「アナログ」だ。
篠田氏も、そう語る。
「一つ一つの鍵盤に音が登録されている」と言われて私の頭には
「メロトロン」という楽器の名前が浮かんだ。
鍵盤1個1個に再生テープが繋がり、鍵盤を押す事でテープが回りヘッドが
密着し、「ストリングス(重ね)」「クアイア」「フルート」などの音色が
出せるアナログ楽器。
プログレッシヴ・ロックには欠かせない「楽器」だ。
鍵盤を押してから音が出るまでタイムラグがあり、LIVEでは大変扱い辛かった
という「メロトロン」。
面白い事に、今回の初音ミク初のLIVE歌唱でも「タイミング」が最大の難関
との説明あり。
テンポダウンやテンポアップが少しでも狂うと聴き手の耳に不快感が残って
しまう・・・との事で
動きの同調も含め、本番ギリギリまで微調整が行われていたそうな。
富田先生は「作曲者よりもそれを実際に実行させる方々の方が大変だ」と
コメントして笑いを誘ったそうだが
80歳を迎えられ、まだまだ新しい事には好奇心イッパイの先生。
「TOMITA」発案だからこそ、皆も「あの人が言うんだからやろう」と
なったんだろうな。
普通だったら「できねぇよ」で終わりだったかも。
でも、もっと困難な事を実際にやってきたパイオニアに声を掛けられたら
後進の人も断れないよねぇ。
※手塚アニメの主題歌を手掛けた時には手塚先生から「あんな雄大な曲じゃ
子供が一緒に歌えないよ」と直しを依頼されたが、トボけて逃げ切った
・・・とか(笑)
シンセを日本で初めて購入したが取説ないので使い方を一から手探りで
学んだ・・・とか
アナログシンセは二度と同じ音が出せず、何度も取り直した・・・とか
なお、客席には高齢層が多かったそうな(クラシックコンサートだからねぇ)。
若い人はネットの生中継で見た人が多かった模様。
公演前には高齢層がミク・グッズに群がってたらしい。さすがTOMITAファン、
気が若い。
ネットで検索したところ
公演前半の演奏曲は、作曲家・富田先生のキャリア総括といって良い内容ですな。
ジャングル大帝、山田洋次監督映画メドレー、NHK大河ドラマ「勝海舟」が
演奏されたそうで。
スペシャで一瞬流れた合唱隊のコーラスは「シンセ?」と思わせるほど
TOMITAしてました(笑)。
公演後半で遂に「イーハトーヴ交響曲」演奏。
スペシャでは少年少女合唱隊が歌うオープニングから紹介。
おお、なかなか瑞々しく荘厳だ。少女革命ウテナの「絶対運命黙示録」を
思い出してしまうじゃないか!
そして初音ミク登場!
有名な物語「注文の多い料理店」に出てきたミクのリアルタイムCG!
「♪わ・た・しは初音ミク、かりそめのボディ♪」
料理店の客はホテル・カリフォルニアの宿泊者のように「チェックアウトできない」。
そのお客の前で、初音ミクとしてPCの中でしか存在できない事を歌う。
う~ん、なんか凄い。素直に凄いと思うぞ。
そして、アンコールの映像では、初音ミクが「リボンの騎士」の主題歌を
歌っている!
あの「帽子」を被って・・・。
あううううう、もう泣きそう。
富田と手塚とミクが手を取ったよ、繋がったよ・・・(宮沢賢治とも)。
そして可愛いよ、ミク・・・。
やっぱ冨田勲先生、スゴイわ。
公演に対しては好意的な意見が大半を占め(というか、こんな挑戦は
「やっただけでも凄い」としか言いようが無いわな)
冨田勲を知らなかった若いファンも、偉大な先人へのリスペクトを語ったりして
私ゃ感激です。
とにかく成功して本当に良かった。
スペシャ以外でもMXテレビで紹介されてたそうだが、これは見逃してしまった。
2月3日には、NHK Eテレで「ETV特集 富田勲 80才の挑戦」として
22:00から放送されるので、これも録画して永久保存だね。